
染織コース
変化を楽しみながら、自分らしい表現を見つける学び
「大学って、教わるところじゃないんだ」というのが最初の感想。若い頃からものづくりが好きで、陶芸や織物の教室に通ったものの、どこか中途半端な気がしていた。「ちょうど仕事も先のことを考える時期で… 何度も説明会に足を運び、2年迷って入学を決めました」。
「色彩や構成、デッサンなど、ものづくりの基礎を学びたかった」という長谷川さん。入学後は、あえて苦手なデッサンのスクーリングを数多く受けた。「何も分からず見よう見まねで。染織の授業も同じですが、これまで通ってきた教室と違い、コツや要領を教わる場じゃないんですよね」。不安な気持ちを抱えつつ、とにかく試しては失敗を重ねる。その中からひとつひとつ、自分らしい表現を見つけていく。「私の場合、具象より抽象の方が、気持ちが入りやすい」。ただし、たどり着くまでの道のりは容易ではなかった。
「じつは1年目に、もう卒業制作の原点とは出会っていたんです」。たまたま実習棟で見かけた、通学生の絞り染作品。強く心惹かれつつも、「絞り染は簡単すぎる」というベテラン学友の何気ないひとことが、素直な想いを曇らせた。ならばと写実や型染をがんばっても、空回りするばかり。「行き詰まっていたとき、構想デッサンの授業で抽象画を描いたら、驚くほど自由に筆が動いたんです」。思いきって、心の向くままに幾何学模様と絞り染めを組み合わせたところ、試作で納得できるものができた。「それからは、染料や絞り方などを変えては実験の連続」。大変だけど楽しかった、と顔をほころばせる長谷川さん。「あるときは夏と冬の水温差に気がつかず大失敗。だけど、その変化もヒントになりました」。教われないから、自分で悩んで考える。だからこそ他に染まらない、自分だけの色かたちをつかめる。『うつろう』と名づけた卒業制作が映すのは、色の変化、自身の変化。そんな変化を楽しむ実験は、これからもつづいていく。
現在は秋のグループ展に向けて新作を制作中。「とにかく孤独な作業なので、皆との発表をはげみにつくったり、他のひとの作品を通して、自分とは違うものの見方にふれることが、とてもいい刺激になります」。