
歴史遺産コース
大好きなお茶の歴史について論文を書く夢を叶える
「何百年も人の手で、伝えられてきた味なんですよ」。お茶の奥深さに魅了され、会社員でありながら中国茶や日本茶の講師も務める沼尻さん。「大好きなお茶の歴史について論文を書きたい」という一心で、本コースに飛びこんだ。もともと古いものに興味があり、先生の案内で京都の街を歩いたり、お寺にこもったりする実地の授業に感動。「座学でも、じかに鎌倉時代の仏像に触れ、本物の重みにハッとしました」。お寺、街並み、美術館など。これまで何気なく訪れていた場所も、ちゃんとした知識があれば、まるで感じ方が変わる。「歴史を学ぶと世界が広がる、と実感しました」。
こうして多彩なスクーリングを楽しむ一方、苦しんだのが目標にしていたはずのレポートや論文。「論文どころか、原稿用紙一枚を埋められなくて」。いくつかの課題をこなすうち、知識が自分の中でつながり、少しずつ筆がすすむようになったものの、今度は論文テーマに苦悩。「お茶の何を、どう研究するべきか」ギリギリまで悩み、ようやく先生から「それですよ、沼尻さん」と言われるものを発見した。
「出土した急須のカタチから、日本茶の飲み方の変化を探ることにしました」。やっとつかんだ重要なテーマ、しかし、だからこそ道は険しかった。まずは膨大な発掘資料を集め、自分なりに分類。その結果をもとに、独自の分析を繰り広げていく。「最後まで迷っていた結論を、じつは〝急須〞に教えてもらったんです」。たまたま出土品に間近でふれた瞬間、それまでの悩みが氷解し、自分なりの確信をつかめたという。「深く見つめれば、モノが歴史を語ってくれるんです」。卒業後は、さらに研究を深めるために大学院へ。「研究そのものは地道で大変だけど、お茶の歴史を少しでも明らかにすることで、文化の普及に貢献できたら」と話す沼尻さん。その手には、遠い昔から託された、文化の未来が握られている。

沼尻 裕子
東京都在住 43歳
歴史遺産コース
(3年次編入学)
18年度卒業
お茶のイベントで外国の人々に会うときも、本コースでの学びが役立つという。「歴史を交えながら日本文化を紹介すると、より深く興味を持ってもらえます。自分の国の歴史をしっかり語れるって、いいですよね」。