
歴史遺産コース
お寺を知ってもらうために。学芸員・広報として活躍
「いま目の前にあるのが、千年も前につくられた像だなんて」。たまたま訪れた展覧会で、仏像の魅力に目覚めた中島さん。「もっと知りたい、できれば触れたい」という想いがつのり、本コースの学生に。「見るのが好き、という気持ちだけで入学して、最初は慣れないレポートに苦心しました」。先生から文献の集め方や引用方法を教わり、親子ほど歳の違うクラスメイトに励まされ、次第に学ぶ面白さを感じていった。「先生方の楽しい講義で、考古学やインド美術史など、未知の分野にもどんどん引き込まれて」。あらためて歴史を学ぶことで、仏像のもつ意味や背景など、より深い見方ができるようにもなったという。
「以前は〝美術品〞として鑑賞していただけでした。でも、祈る人や祀る人のさまざまな想いがあってこそ、世に生まれてくるんですね」。知れば知るほど、新たな興味がわいてくる。ある地方で出会った「被り阿弥陀」に衝撃を受け、卒業研究のテーマにしようと決心。「かぶる仏像なんて見たことなくて、なぜ?なんのために?と頭の中が疑問でいっぱいに。有名な仏像と違って研究者も少ないから、じゃあ自分で確かめよう未来につづく歴史と」。意気込んで調査をはじめたものの、扱える資料はごくわずか。様式などから造られた年代を検討するため、300体以上の仏像と細部を見比べていくことに。「最後の方は、向こうから来る人が仏像に見えるほど…でも苦労したからこそ、かつてない達成感を得られました」。
卒業と同時に学芸員資格を取得。やがて縁あって、歴史ある寺の広報として働くことになった中島さん。「ひとつひとつ迷いながらですけど…」。大学での知識に加え、参拝客としての目線を忘れず、寺を訪れる人が何を求めているか、それにどう応えられるかを模索している。「私の取り組みが、長い歴史のなかの〝点〞として刻まれるように」。中島さんの熱い視線は、いつの間にか、仏像と向き合う自身の未来に注がれていた。

中島 美音
大阪府在住 37歳
歴史遺産コース
(3年次編入学)
14年度卒業
現在、大阪府高槻市にある「神峯山寺」の学芸員・広報として在職中。「私の提案した〝毘沙門不動ご祈願ろうそく〞が新たな授与品に。今後も、より広くお寺を知ってもらい、親しんでもらうための企画を考えたいです」。