
和の伝統文化コース
日本の心を見つめ、新しい知見をひらく学び
「和物っていいな、と、年を重ねるほど思うようになりました」と入学のきっかけを語るM.Sさん。華やかな西洋文化に憧れた娘時代を過ぎ、家庭に入ってからは家族の世話に追われ、ようやく自分の時間を持てるというタイミングで、本学の広告を見つけた。「これから趣味を増やし、人生を豊かにする手がかりになれば」。そんな期待をはるかに上回る、幅広く本格的な学びの数々。さほど詳しくなかった伝統文化の世界に、すっかりひきこまれていった。「これまでテレビで見かけるだけだった〝能〞も、テキスト課題やスクーリングで学ぶと、別モノのように舞台が面白く感じられて」。茶道や花道など、ひとつひとつの授業を受け持つ先生が、その道の達人や専門家であるだけでなく、熱意ある指導に感銘を受けたという。
「最初は、通信教育のスタイルを〝気軽でいい〞と受けとめていたんです。でも初提出のレポートで、先生が細部まで自分の意図をくみ取ってくださったのがうれしくて。楽しくがんばって取り組むほど、評価や結果で返ってくると実感しました」。通信の距離をこえた心のやりとりに、学ぶ意欲が一気に開花。「卒業論文の題材も、調べられる資料が残る時代の、あまり前例がないものにしよう」と、〝大正・明治期の珈琲普及〞という異色のテーマに挑戦。「調べるほど、興味をそそられる発見があって。もう一歩研究を深いものにしたくて、卒業後は大学院へ」。入学時には想像もしなかった、自身の変化である。
そんなM.Sさんが、本コースで得た一番の成果とは。「伝統文化という形で受け継がれてきた昔の人々の想いが、今の自分でもひしひしと身に迫るように、共感できることが多くて。私も日本人の一員なんだ、と、地に足がつく安心感を得られました」。人生の節目に、伝統文化を通して、自身のなかにある日本の心を見つめ直せたというM.Sさん。新しい知見をひらく学びは、思いがけず、自分の奥深くへとつながっていた。

M.S
兵庫県在住 55歳
和の伝統文化コース
(3年次編入学)
15年度卒業
卒業後は大学院の「文化遺産・伝統芸術分野」に進学。「珈琲文化普及」の研究論文をさらに練りあげて完成度を高めることを、何よりの目標としている。