
文芸コース
報道の仕事×文芸。言葉を伝える学びを活かす
「言葉って、重いんだ」。本コースに来て、自分が向き合うものの難しさをあらためて思い知らされた伊東さん。仕事面でもプライベートでも、本学でふれるすべてのことに多くの刺激を受けたという。まずは文芸の幅広さ。「じつはドキュメンタリーに関心が強くて、小説とか創作ものは書くどころか読むことさえあまりなく」。あるスクーリングで、創作文を即興で書くお題を出され、原稿用紙を前に七転八倒。「800文字を埋めるのがこんなに大変だとは!と思いましたね」。一方では、雑誌の編集者や作家など多彩なジャンルのプロから、制作現場の話を聞ける楽しみも。「〝書く〞という行為の裏側に何十倍もの〝見る 聞く 知る〞努力が必要だと知りました」。多彩なクラスメイト、おもちゃ箱のようなキャンパス、情緒豊かな京都の街にも始終ワクワクさせられた。
とはいえ、働きざかりの学生生活は決して甘いものではない。睡眠時間を削り、早朝や帰宅後の深夜に1時間ずつ、本とパソコンに向かう日々がつづく。忙しくてめげそうになったとき、頭に浮かぶのは先生の言葉。「プロは書けない日も必ず机に向かいペンを持つ」。そうして卒業段階に至り、言葉をテーマに研究をまとめあげた伊東さん。「仕事ではついマニュアルどおりに受け流していた言葉のひとつひとつを、よく考え、選んで使うようになりました」。言葉で伝える難しさ、そして、伝えられることの大きさを知り、表現者としての新たな意欲が芽ばえた。「あいまいな使い方で言葉から逃げずに、もっと人にはっきり伝える努力をしていきたいです」。その手には、剣よりペンよりなお強い、言葉への想いが握られている。

伊東 秀一
長野県在住 50歳
文芸コース
(3年次編入学)
10年度卒業
卒業後は大学院へ。仕事ではテレビの報道局に勤めるかたわら、地元の大学でメディア論を指導。「文字通り、本学の教えを〝ぬすんで〞フル活用させてもらっています」。