
洋画コース
変わる自分×洋画。〝輝くもの〞を描きつづける
「何よりも、私自身が変わりました」と、学生生活を振り返る北村さん。ずっとつづけてきた手芸の技を高めようと本学へ。まず驚いたのは、スクーリングでもテキスト科目でも、ひとつひとつの指導がきめ細かく、丁寧なことだった。「以前に通っていたデッサン教室では、なぜ直すのか、なぜその色なのか、何も問えず指示通りにするだけだったので」。ここでなら、先生とのやりとりを入り口に、いろいろ模索しながら、自分だけのやり方を身につけられる。「キャンバスを並べる学友たちも、私にとっては貴重な先生でした。どう描きすすめていくのかを間近で眺めさせてもらったり、直接教わったり」。限られた時間内で仕上げる緊張や集中力を身体に覚えさせたくて、あえて構想中のままスクーリングに臨むこともあったという。さらに、個性が異なる先生方の意見や、藝術学舎で教わった新しい技法など、さまざまな学びを経て、卒業制作のテーマをつかんだ。
「自分が見ていて癒される、〝輝くもの〞を描きたい。それも、高価な宝石とかじゃなく、道端のゴミなのに光を放っているような」。心に決めてからは、自宅や旅先、インターネットなど、あらゆるところに目を凝らし、ついに「割れたビンのカケラ」に偶然の美を発見。その輝きが引き立つよう、あえて難しい技法にもチャレンジし、制作に打ち込んでいった。一時、その筆が止まったのは、実家の父親が倒れたとき。最期を看取り、再び画面と向き合ってからは、絵が好きだった父への想いも作品の中に注ぎ込んだ。「私にこんな大作が描けるなんて想像もしなかったし、大嫌いだった本もいっぱい読むようになった。家族からは、ボンヤリのママが引き締まった、なんて」。笑いながら、自らの変化を数えあげる北村さん。その目に宿した輝きは、人生の暗いときも明るいときも、描く道を示しつづけてくれる。
卒業制作の勢いはコロナ騒動で途切れたものの、あらためて新作を構想中。「いずれ足腰が衰えても、絵ならつづけられる。そう思ってあせらずに描きつづけます」