
洋画コース
独学から体系的な学びを求めて。他人の助言が支えに
だれに見せるでもなく、ずっと、ひとりで描きつづけてきた。幼い頃に祖父母の家で見て、憧れてきた油絵を。「見る」から「描く」に変わったのは、短大時代の授業がきっかけ。身体の事情で中退したものの、木村さんの、絵への想いは断ち切れなかった。「ただ、独学で描いても悩みが深くなるばかりで。いちからきちんと教わろうと見つけたのが、本コースでした」。体調に不安のある自分でも、通信なら、絵にも大学にも再挑戦できる。入学を決めるのに迷いはなかった。久しぶりのデッサンや、人前での発表に一喜一憂しながらも、基礎から学び直すことで自身の絵が変わるのを感じた。「webスクーリングも面白いし、対面授業でいろんな世代の方と話せるのも楽しかったです」。しかし、3年次の自由課題まですすんだとき、入学前からの難問が再び立ちはだかった。
「何を描けばいいか、わからない。それが一番の悩みでした」。技法や色彩には的確なアドバイスをくれる先生も、その人のテーマまでは教えられない。頭を抱えた木村さんが始めたのは、とにかく描いて、描きまくること。そして、描いた絵の共通点を探していくと、「光があたっているもの、それが、私の答えでした」。以後は、糸がほどけるように制作がすすんだ。身の周りのあらゆるものをライトで照らし、心惹かれたモチーフをキャンバスに写しとっていく。
描きたいものが見えると、おのずと筆先にも勢いがついた。「大学の広い教室だと、家では気づけなかったバランスの悪さもわかるから」。先生から何度も「休憩をとって」と言われるほど、ひたすら絵に集中し、ついに大作の卒業制作を完成させた。「ひとりで描いていたときは、作品を人に見せる気にもならなかったけど」。学びをやり遂げたいまは、その自信を力に、公募展にも挑んでみたいという木村さん。静かな明るさを湛えたその絵は、これからさらに、光をあてられていくだろう。
他人からの賛辞やアドバイスが、これまでにないモチベーションに。「卒業後、もう皆と描けないのがさびしく思える時もあります。元々ひとりで描いていたのに、不思議ですね」。