
洋画コース
先生や仲間と描く楽しさを力に作品を描きつづける
その年、だれよりも情熱的にあざやかに100号の大作を描ききり、学長奨励賞を獲得した島田さん。本コースへの入学を決めたのは、71歳の時だった。「孫の世話も一段落して、もう好きにしていいかなと」。年齢や体力が気になったものの、「今やらないと後悔するよ」という娘の言葉に背中を押された。「入学して驚きました。牛の骨とか、布の塊とか、これを絵にするの?というものばかり」。しかし描きだすと、微妙な影やラインが見えて筆がすすんだ。「初めてのことばかりで、何をしても楽しかったです」。
学生以来のレポートに「本当に124単位もとれるのか」とひるんだものの、新たにできた友人と励ましあって地道に努力。「古今東西の美術史を学び、美術館に行くのが面白くなりました」。そんな大学生活の中で最大の衝撃が、人生初の抽象画だった。「自分に描ける気がしなくて、スクーリング2日目まで白紙のまま、最後にもういいや、と」。手の動くままに描いたものが、思いがけず褒められた。「〝絵は自由でいいんだよ〞という先生の言葉を、初めて実感できました」。
しかし「自由」を支持する先生も、「自己満足」は決して認めない。「卒業制作の準備科目に何度も不合格となり、計8枚、描き直しました」。けれど、その過程こそが、作品と自身の成長につながったという。「ようやく制作にすすんでからは、描くのが楽しくて楽しくて」。あえて木製のキャンバスを選び、子どものようにひっかき、かつ、愛しむように多彩な色を注ぎこむ。その画面からあふれるのは、描く楽しさと学友たちへの愛。「支え合う仲間がいた、だから楽しかった。そんな自分の心に気づいて」。卒業して新作を手がけ、「これからは本当にひとりで描くしかない」とあらためて実感したという島田さん。たとえ孤独な作業でも、心の中には、先生の教えや皆の姿が息づいている。その愛を力にこれからも、新たな作品を描きつづける。
学内外の展覧会や公募展に、どんどん出品を計画中。「卒業して、完全に孤独な制作を経験し、できた作品はひとりでも多くの人に観てほしい、という思いが強まりました」。