
日本画コース
「いつか絵を習いたい」長年の夢を叶えるために入学
「先生に絵を教わるなんて、子どもの頃以来でしたから」と、100号の大作を前に照れ笑いする堀さん。「いつかは絵を習いたい」という50年来の夢を叶えるため、選んだのがこの日本画コースだった。「展覧会で見るたびに、どうやって描いているのか、不思議で、知りたくて」。仕事を離れたいまこそ、時間をかけても未知の世界に挑もうと決めた。「初心者だし、この年齢だし、ずいぶんと悩みましたが」。案ずるより産むが易し。気後れする心は、最初の授業で一瞬にして消えた。「みんな年齢も経験もさまざま、だけど志が同じだから、壁も何もないんです」。
そんな熱意あふれる仲間に囲まれ、学びについての考え方も大きく変化した。「初めは最短での卒業をめざしていたんです、体力的なことも考えて。でも先生の言葉で、〝じっくり学ぶこと〞こそが自分の目標だと気づきました」。最初の頃は「丸1日かけてコップやリンゴを描くなんて」と思っていたが、描く画面が大きくなるほど、「基礎のデッサンが本制作の要になる」と実感。少しずつ意識が変わるにつれ、画も成長していった。そしてついに100号の卒業制作へ。「テキスト科目で、大画面をいちから完成させた経験が役立ちました」。
体力も気力も要る大画面、だからこそ達成感も大きい。「学生のうちに、故郷、信州の大自然を大きく描きたかったんです」。そして仕上げてみれば、達成感とともに、やり残した思いも生じる。完成は、次への一歩。「公募展をめざすのも良いけれど、何より自分のために描きたい」。勤めていた頃はつねに他人と比較され、競い合う人生を送り、ようやく人の目から自由になれたのがいまの自分。「人生100年時代、家族や仲間との交流と同様に、ひとりで生きる時間も大事にしたい。これからは、ふと思いついた時に筆を持ち、小さな画でも、生活の一部として描いていけたら」。キャンバスに描かれた故郷の山里には、そんな堀さんの心を映す、無垢な自然が広がっている。
交通の便がよく、緑豊かな東京外苑キャンパスには、今後も藝術学舎の講座などで通いたいと考えている。「スクーリング始業前の朝、駅前の喫茶店で数人のメンバーと集い、絵などについて語りあったのも、楽しい思い出です」