
日本画コース
芸大への憧れ×日本画。夢だった大学生活を実現
「生まれ変わったら、芸大に行こう」と思っていたところ、本学を知り、居ても立ってもいられなくなって入学した合田さん。当時の想いを語る声は、女子学生のように弾んでいた。実際に女子学生だったのは戦後の混乱期。芸大に行くなど、裕福な子どもにしか許されない時代だった。あれから60年。夢は、ついに京都で叶った。
憧れの大学生活、それは初体験の連続でもあった。まず驚いたのが、「習うのは画だけじゃない」ということ。テキスト課題に欠かせない、レポートも人生初。「高校卒業以来、書くといえば家計簿ぐらいでしたから」。こつこつ取り組むことで、少しずつ慣れていった。さらに、何を履修すればいいか迷うほど、幅広いジャンルの自由選択科目。ここでは学友が支えとなり、自分に合いそうな科目をすすめてくれた。「哲学、環境学、地域学。世の中のいろんなことを知り、描く画に芯が生まれた気がします」。
そして、何より感心したのが、指導の誠実さ。「先生方はみな、自分たちの体得してきたことを、惜しみなく伝えてくださいます」。じつは夫の転勤に付き添い、さまざまな土地で日本画を習っていた合田さん。家事や育児の合間に、コツコツ技術を磨いてきた。「それでもずっと、自分のなかに満たされない何かがあって。大学に来て、技以上に得たものは数えきれません」。広い知識、信じられる師、そして、無心に描くことのしあわせ。
「大学に来てから絵が変わり、まだまだよくなると感じました。これからも、見た人が優しい心を取りもどせるような、悲しんでいる人の心にも届くような絵を描いていきたい」。100歳まで描きつづけなきゃ、と笑う合田さん。穏やかでしあわせそうな絵の裏側には、自由に描けなかった頃の深い苦労が隠れている。だからこそ、その画は、深く豊かに見る者の心を包みこむ。
卒業制作は京都グランヴィアホテルのロビーを飾り、自身は大学院へ。「絹本など、新しい画材に挑戦中です。まったく予定外でしたが、学びの場から離れがたくて」。