
写真コース
卒業制作が出版社に認められ、人生初の写真集に
「学ぶ前より、柔軟になれた気がします」。卒業制作が出版社に認められ、そのまま人生初の写真集に。メディアからも注目される川野さんの口から出たのは、意外なほど気負わない言葉だった。とはいえ、本コースへの入学時に期待していたのは、「アートな写真」や「アカデミックな知見」。気軽にはじめた〝女性のためのカメラ術〞ブログが注目され、趣味の写真が仕事になりかけた頃だった。
「写真教室で学んではいましたが、大学で深く学べば、もっと表現力を磨けるだろうと」。実際に、手応えは十分だったという。写真の概念をくつがえす斬新な授業。写真を取り巻く世界を学べる一般教養。そして何より、川野さんの心を強く動かしたのは、コースで出会う人々のエネルギーだった。「第一線で活躍される表現者としての考え方を、生の声で語ってくれる先生方や、必死で自身の表現と向きあう級友たち。こんな素晴らしいメンバーに、私の作品づくりを見てもらえる機会は、後にも先にもないから」。とにかく全力で取り組もうと、卒業制作のテーマ探しに没頭。「張りめぐらせたアンテナに、偶然ひっかかったのが山でした」。
写真のために登山をはじめて、たちまち夢中に。「なぜ、こんなに登りたいのか」という疑問をそのままテーマとした。「最初の頃は、背伸びして、大げさな死生観などを語ってみましたが」先生たちの鋭い指摘を受け、深く自問自答。「結局、自分が感じたことを素直に表現するしかない」と悟った。そうして、川野さんにしか撮れない作品が生まれた。好きで撮っていただけの写真が、自分の想いを伝える分身になると知った。「いつでも身の丈にあう視点で撮影したいから、山に持っていくカメラは、ほぼひとつ」。芸大で学んだからこそ、芸術へのこだわりから解放されたのかも、と笑う川野さん。だれにでも開かれ、だれもが自然と誘いこまれる、等身大の写真を撮りつづける。
卒業制作を基にした写真集「山を探す」は、リブロアルテから好評発売中。「〝全ページ蛇腹折りにしたい〞と出版社を説得するのに、大学でのプレゼン経験が役立ちました」。
[自身のサイト]http://kyokokawano.com/