
ランドスケープデザインコース
新しい道で。持続可能な農業の実現を目指して
「みんなが私の思いに共感してくれて、それだけで大きな力をもらえました」という佐野さんの夢は、”食べられる森“をつくること。海外で教わった「アグロフォレストリー」という持続可能な農法に惚れ込み、有名企業のエンジニアから「地域おこし協力隊」へと大転身。移り住んだ岡山で森をつくる活動に取り組みながら、専門家としてのスキルをつけようとランドスケープデザインコースに入学した。
「とくに印象的だったのは、毎回さまざまな専門家の先生から話を聞けるスクーリングですね」。日本庭園やガーデンデザインといったベーシックな学びだけでなく、樹木の性質や、設計用CADソフトの使い方といった実践的な内容、観光事業やまちづくりの実際、日本人の美的感性まで。「一見、かけ離れたジャンルのようでも、すべてが植物を通して私たちの身近につながっているんです」。奥深い自然の学びは、ときに、自身を見つめ直す鏡にもなる。「それまでは食用とか、防風とか、機能面でしか草木を見ていなかったんですけど」という佐野さんの森には、蜜も花も楽しめるエルダーフラワーの苗木が輪を描くように並んでいる。「庭園設計の課題で、見た目の大切さを学んだ成果です。車で通りかかったとき、白い花にハッとしてもらえるように」。
さまざまな学びを自身の森に注ぎこんでいく佐野さんだが、「最初は、コースで話せるほど自分の活動に自信がなかった」と打ち明ける。ある程度計画が軌道にのってきてから、課題を通して”食べられる森“の話をしたところ、みんなから想像以上に多くの反響がもらえたという。「おかげで、それまでの迷いや不安が、頑張る気持ちへと変わりました」。さらに先生の助言をもとに、より大規模な森林再生に関われるコンサルタント職へとステップアップすることに。「森づくりは10年がかり。この森を地元の皆さんと育てつつ、新しい仕事で経験の幅を広げていけたら」。もっと日本中に、おいしく楽しい森をふやすために。「入学したことで多くの知識や勇気をもらい、私ひとりでは切り拓けない道に立てました。この先にどんな風景が待っているか、楽しみです」。
卒業生インタビュー
佐野 香織
ランドスケープデザインコース 21年度卒業
岡山県在住 33歳