卒業生紹介

京都芸術大学を卒業し、
活躍している先輩を紹介します。
卒業生インタビュー

小林輝さん

株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ 企画プロデューサー

何をやるかより、誰といるか。
― 特技も目標もなかった私の武器は、人との出会い。自分の“好き“を企画に詰め込み、好きな人と仕事をしていく。

ユニバのことしか考えていない高校生。

大学に入学する前のことからお聞きしたいのですが?

小林
高校生の時は、とにかくユニバ(ユニバーサルスタジオジャパン)に行くことしか考えてなかったです(笑)。

ユニバですか?!

小林
はい。どれだけ早く学校を終わらせてユニバに遊びに行くか、みたいな(笑)。

じゃあもう、年パス(年間パスポート)とかも持ってた?

小林
はい。3年間丸々、年パスで遊んでました(笑)。めちゃめちゃ好きでしたね。

ユニバ愛がすごかったんですね(笑)。それ以外の面では、どんな高校生だったんでしょう?

小林
その頃は芸術とかまったく興味なくて、バイトして、放課後ユニバに行って、土日バイトして。学科も普通科で、特に何かに興味があるわけでもなく、絵もまったく描けなくて。本当に、普通の高校生をしていました。

なんかわからんけど、なんかあると思うねん。

そこからどうやって京都芸術大学に?

小林
進路を考えるタイミングになって、「何にも興味がないままで大学に進んでも、何も身につかないだろうな」と思ってたんです。でも、やりたいことはまだ見つかってなくて。とりあえず、オープンキャンパスを練り歩いてみようと思って。

まずは、いろんな学校を見てみようと。

小林
美容系の専門学校も回ったりして、その頃初めて京都芸術大学にも行きました。広いし、大きいし、綺麗で。でも芸術にはまったく興味がなかったから、「綺麗やけど、私が入る学校ではないなぁ……」と思ってて。

大学の印象は良かったけど、入学する場所ではない……と。

小林
そしたら「新しいコースが開設します。なんでも相談してね」っていうブースがあって。なんか目があったんですね、そのブースの先生と(笑)。先生は、今の会社の副社長でもある軽部政治さんで。お話を聞いてくれそうだから、まずは人生相談してみようと思って。

人生相談!

小林
「自分が何に興味あるか分からないんですけど、どうしたらいいですか?」って相談したら「うち、来なよ。何でもできるよ」って。テクノロジーと企画ををかけ合わせて、新しいものをつくり出すコースだよ、とクロステックデザインコースの説明を受けて。「どこにも行くとこないなら、うち来なよ」っていう、その言葉一つで、入学しました。

すごい!やりたいことが見つかったというより、そのとき軽部さんと出会ったから?

小林
パソコンも持ってなかったし、まったく何もできなかったので。これから働くうえで、パソコンには触れるようにならなきゃいけないんだろうなとは思ってたので、それも含めて考えて、入学を決めました。

その場で想いが決まった感じでしょうか?しばらく迷ってから?

小林
しばらくは迷いました。母親や父親に話しても「芸大!?なんで?」みたいな。お父さんはなんなら、「別に学びたくないんやったら、高校にも行かなくていいよ」っていう考えだったので。逆に「なんで行きたいん?」って、めっちゃ詰められて(笑)。「なんかわからんけど、なんかあると思うねん」と。

わからないけど、感じるものがあったんですね。軽部さんとの出会いから。

 

見えないものをかたちにする、「企画」との出会い。

小林さんはクロステックデザインコースの1期生で、コースもできたばかりだったと思いますが、授業はどんなことをしていたんですか?

小林
1年生のときは、幅広い分野を体験していくという感じで、いろんなことにチャレンジしてみて、そこから2年3年になるにつれ、専門分野の授業を選んでいくっていうスタイルでした。はじめは、プログラミングの基本とか、3D CADを使った製作とか、広告のコンペに企画を出してみるとか。

ほんとに幅広いですね!自分のなかで、「しっくりくるな」っていう分野はありましたか?

小林
プログラミングのHTMLとか、めちゃめちゃ苦手で。機械を使うのも得意じゃなくて。それよりは、「企画」で見えないものをかたちにするっていうことをメインでやっていましたね。

「企画」に関係する授業で、特に印象に残っているものはありますか?

小林
たしか一番初めの授業が、サプライズの授業だったんです。

サプライズの授業?!

小林
課題がひとつ、「誰かを幸せにする」っていうもので。それをクリアできれば何をしてもよくて。みんな必死で、誰かを笑顔にさせたりとか、驚かせたりしてました(笑)。

面白いですね。企画って、やったことないと、どう考えたらいいのか分からない気もするんですが、どうやって学んでいったんですか?

小林
産学連携のプロジェクト型授業があって、私にとっては企画の実践経験を積むチャンスでした。たとえば、Airbnb(エアビーアンドビー)さんとのプロジェクトでは、「宿泊サービスに新しい価値を与えるものをつくろう」ということで新しいサービスの企画にチャレンジさせてもらって。

どんな企画を立てたんですか?

小林
いくつかのチームに分かれて、それぞれがサービスを提案したのですが、私たちのチームは思い出を地図上に残す「Runinto」というサービスを考えました。 Googleマップに、コメント機能ってありますよね。そういうイメージに近いもので、場所の情報と一緒に、訪れた人の気持ちだったり、店員さんの雰囲気とかも投稿できて。その地域に住んでる人とか、行った人しか知らない情報がわかるようなアプリをつくる企画でした。
小林
つくって終わりじゃなくて記者発表も経験させてもらって、Airbnbさんも一緒にいてくれて、記者のみなさんの前で、サービスのプレゼンをさせてもらいました。

企画を考えて終わりじゃなくて、世の中に向けて発表するっていう機会を、学生の頃から経験してたんですね。

小林
企画以外の体験でいうと、京都芸術大学はアートとの距離がすごく近くて、「ARTIST FAIR KYOTO」に運営アシスタントとして参加して、イベント会場での作品設置やゲストの案内をさせてもらい、アートの現場にふれる機会をいただいたことも、大きな糧になっています。

アートの現場からも、学んだことがあったと。

小林
アーティストフェアの活動の中で、あるとき、「何をするかじゃなくて、誰といるかだよ」という言葉をくれたリーダーがいて、すごく腑に落ちたんですね。「私も一緒にいたい人といたい」と思って、そういう環境に身を置くように心がけてきました。

誰といるかを、大事にするようになったんですね。

小林
机に向かって企画を考えるだけじゃなくて、アーティストたちと一緒に展示をつくり上げた経験や、そこで培われたつながりは、いつか自分の武器になるかもしれないと考えています。

インターンで、CMや広告が世に出るまでの過程を体感。

いろんな出会いや経験がある中で、「企画を仕事にしていこう」と決めた瞬間ってあったんでしょうか?

小林
そうですね。2年生の夏休みに、今の会社オレンジ・アンド・パートナーズに1ヶ月くらいインターンで通わせていただいて。そのときに初めて、リアルな企画の仕事が見られたというか。

どんな印象でしたか?

小林
企画が世の中に出る、もっともっと前の段階から、「こうやって“もの”ってつくられていくんだな」とか、「一つの広告がこうやってできていくんだ」っていうのを間近で体験させていただいて。制作の現場とはまた違う、その手前の、企画をする人に興味が湧いたというか。一緒に働いてみたいなと思いました。

それにしても、インターンって3年生くらいから動き出すイメージがありますが、2年生でもうインターンを?

小林
同じコースに、私の大親友の子がいたんですけど、1年生の頃からめちゃめちゃインターン行ってて。その子が「楽しかった」って言ってたので、ちょっと気になるな〜みたいな。

親友からの刺激もあったんですね。1ヶ月のあいだ、どんなことを経験させてもらったんですか?

小林
企画したCMや広告を撮影するときに、素材になりうる場所を探すんです。川辺とか、山とか。車で1日かけていろんなところを回って、「ここが撮影地に良さそうだ」っていう“ロケハン”をした時に「なんか、すごい、いい!」って思って。

撮影地を探すために1日いろいろ回って。

小林
いろんな場所を歩いて、撮影の許可をとって、みたいな具体的な動きがそれまで世に出たCMを見ているだけでは見えてなかったので。そういうのを体感したときに、こうやって仕事をつくっていくんだな、と思って。

それを2年生の夏に体験できたのは、とても大きいかもしれませんね。

“好き”を企画に詰め込んで、好きな人と仕事をしていく。

オレンジ・アンド・パートナーズに入社してからは、どんなお仕事を?

小林
すでにリリースした企画も、まだ世に出てないものもあるんですけど。クライアントさんの新しいビルの開業に向けて、ブランディングから携わって開業イベントをチームで企画したり、自分の好きなアートと絡めた企画を提案したりしています。

好きなことを企画と絡める、ワクワクしますね。

小林
私の場合はアートですけど、「食」の方向で考える人もいたりとか、けっこう自分の好きなことを詰め込めるというか。

それが歓迎されている?

小林
そうですね。まだ甘いところはあるんですけど、はじめのフラッシュアイデアとして好きな要素を絡めた企画を会議で出すと「これじゃあ、1回詰めてみようか」って言っていただいたりとか。

それはきっと、うれしい場面でしょうね。

小林
クライアントさんに提案する前に、社内でも何度も打ち合わせをするんですけど、その時に「これってどういうこと?」「これはどうするの?」とか、先輩たちからたくさん質問をもらったり、反応があったりすると「よし!」ってなりますね。

周りの先輩たちを見ていて、すごいなって思うことはありますか?

小林
社内行事というか、決まり事が一つあって。社員全員の誕生日をお祝いするっていう。

あ、それ、小山薫堂さんの本でも読んだことあります!

小林
みんなが本気で、誕生日のサプライズを企画するんです。予算もしっかり取って、仕事と同じくらいの熱量で(笑)。シチュエーションや段取りを打ち合わせしながら決めていく。この前、軽部さんの誕生日では、愛車のタイヤがボロボロになるくらいスタントマンがドリフトをして、最後は愛車が爆発したように見せる演出もあったり、テレビ番組並みのサプライズを仕掛けていました。

すごいなぁ。自分の誕生日はもう経験しました?

小林
はい、私の誕生日は通信簿をいただいて。父と母が、私がどんな仕事してるか、まだあんまり分かってないみたいで「この子はこういうことを頑張ってます」みたいなことを書いてもらった通信簿と、大人の女性になるための万年筆を。あと、薫堂さんの手書きの名刺を、限定100枚でプレゼントしてもらいました。

愛がありますね。何もやりたいことが無いところから大学でいろいろな人たちに出会って、今の職場と出会って。これからの目標は?

小林
大学時代の友人と、一緒に仕事をしたいですね。よくみんなで飲みに行ってお話するんです、「いつか仕事しようね」って。今は、それが目標です。

とても楽しみですね!さいごに、これから大学に入る高校生のみんなへ、一言メッセージをお願いします。

小林
私は、「大学でこれしてました!」って言えることはあまりなくて。でも、そのとき、私が一緒にいたい人といたこととか、自分の“好き”と向き合ってきたこととかは、社会人になるとすごい武器になるものだなぁと思うので、なんでもいいから好きなことを、ずっと続けてほしいなって思います。

とても素敵なお話を、ありがとうございました!

 

 

取材・記事|久岡 崇裕(株式会社parks)

卒業年度・学科
2022年
プロダクトデザイン学科 卒業
出身高校
大阪府立茨木西高校
プロフィール
クロステックデザインコース第 1 期生。Airbnbとの産学連携プロジェクトとなるアプリ開発事業への参加や「ARTIST FAIR KYOTO」での運営アシスタントなど、企画やイベント運営の現場を経験。現在はオレンジ・アンド・パートナーズに入社し、小山薫堂氏、軽部政治氏のもとで企画・プロデュースに向き合う日々。

作品

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会社恒例の誕生日サプライズで小林さんがもらった通知表と万年筆。 (社長・副社長とともに)

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