
「KAMEOKA FLY BAG Project」: 市民、事業者、アーティストが一丸となり行う、使い捨てプラスチックごみゼロをめざすアクション Photo:Natsumi Kinugasa
本学では創立以来、芸術を、ただ個人の表現や贅沢な商品としてだけ考えるのではなく、人間の福祉や生きがい、また地域での調和ある生活環境を作るものとして探究してきました。本領域はその中心的な研究関心を担っています。
地域文化デザインや芸術教育を学んだ修了生たちは、各地で創造的な活動を通じて、ひと、モノ、地域を育てる仕事に携わっています。本領域では文化芸術の研究者を目指すだけでなく、美術館の教育普及担当(エデュケーター)や知育教材の開発者、地域とともに働くデザイナーなど、アートプロジェクトやデザインの実践を通じて、地域の文化やコミュニティの成熟をサポートする人材となることを期待しています。文化創生分野では本学独自の認定資格である「芸術教育士」の資格取得も可能です。また、超域制作学プログラムではアートの現場で即戦力となるプロフェッショナルの育成も目指しています。
- 「芸術教育⼠」とは、京都芸術⼤学が独⾃に認定する資格で、本学文化創生分野の修了生など⼤学所定の教育課程を経た⽅に授与されます。
分野
文化創生〈芸術教育(社会人学習支援、こども芸術教育、福祉とアート、児童文化研究)、地域文化デザイン(サーキュラーデザイン、地域ブランディング、文化資源活用)〉
超域制作学プログラム〈アートプロデュース(後藤・鬼頭ラボ)、アートプロジェクト(保科ラボ)〉
特長
対面学習+オンライン学習
文化創生分野
芸術教育
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芸術を通じて、ひとやコミュニティをつくる
芸術とは、本来、人間が自分の生来の能力を拡張して得た力のことを指します。芸術は人間の成長を助ける活動です。そして人の成長は、学校のなかだけで収まるものではありません。就学前、学校外、社会人向けなど、生涯にわたって自分の能力を引き出す機会があります。本分野では、芸術活動を通じて個人やコミュニティにはたらきかけ、その感性と想像力を伸ばすためのプログラムディレクターや学習支援者を育てます。
特長
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リアルな設定の学習プログラムを経験
学習プログラムは、「伝統文化や地域文化などの地域資源としての研究」「社会人向けの学習支援」「地域コミュニティでの芸術活動サポート」「文化資源の発掘とその教材化」といった現実的な課題や状況にあてはめやすいものを設定。年間を通して全国各地で行うフィールドワークにおいて実践的に取り組むなかで、自身の研究対象やその方向性を明確につかんでいきます。
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共通課題とゼミ指導による問題探究
少人数のゼミで、それぞれの研究テーマに即した指導と助言を受けて、修了研究をまとめていきます。それとともに、ゼミ全体で取り組む共通の課題を通じて、自分自身の研究テーマの実効性や意義について反省する機会も設けられます。
地域文化デザイン
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デザインの力で、モノや地域を育てる
デザインとは、幸せな生活のかたちを整えていくことです。しかし、地域それぞれに風土も歴史も住民も違えば、過ごしやすい暮らし方、適した生業のあり方もそれぞれです。こうした生活文化の特性を尊重しつつ、モノ、空間、行事などの設計を通じて地域の潜在力をどう引き出して育てていくか。また地域の自然・文化資産を見出し、どう持続的に活用していくか。本分野では長期的に、地域文化の成長と伴走するクリエイターを育てます。
特長
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プロジェクト型の授業で課題の発見や解決を学ぶ
地域ブランディング、伝統産業のリノベーション、コミュニティスペースの運営、芸術祭の企画など。教員が関わるプロジェクトを実地の教材として、講義や見学、活動への参加を通じて学んでいきます。また、年間を通して全国各地で行うフィールドワークなど、さまざまなプロジェクトのケース・スタディによって、情況観察の能力を鍛えつつ、課題の発見や解決における自身の方法論を構築します。
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デザイン概念の根本的な再考と個別研究
各プロジェクトを通じた学びと併行して、個別の研究テーマを追究する少人数ゼミも設けられています。流行り言葉や既成概念に流されることなく、デザインの意味を最初から考え直す機会でもあります。教員や他の学生とのディスカッションを通じて、自分自身の研究テーマを精確に練り上げます。
プロジェクト例

SHIMANO主催「ソーシャル×散走」企画コンテストへの参加
社会課題への取り組みとして、地域の資源や魅力を活かした散走(自転車での散策)企画を公募する学生コンテストに、ゼミ内でチームを組んで参加。修士1年生チームが2023年度の最優秀賞「大賞」に輝きました。
受賞作品のスライド
メッセージ
未来を輝かせる技や術を現場の中で磨く
僕たちはどうしていつも「新しさ」を追い求めるのでしょう?よくよく眺めて見れば今新しいと言われているもの事は、すでに過去に存在していたものが時代や社会を超えて出現したものや、またはその組み換えの新鮮さであったりすることが多いことに気づきませんか?つまり僕たちは、その新しさの光に目が眩んで過去の暗がりの中に消えてゆく光の粒に気付かないだけなのかもしれません。人類の未来がどれだけ続くのかわからなくなってしまった現代、少なくとも僕の寿命よりは長く続いて欲しい未来の時間を輝かせるのは「新しさ」という過去の焼き直しではなく、僕たちの足の裏の土から生まれ、死んで行った人々が成し得なかった究極の仕事「平和」の実現だと思います。文化創成領域では、この世紀が生み出したぶよぶよの日常を切り裂き、膿を出し、新しい時代の身体を鍛えるための技や術を現場の混沌の中で磨きます。美しい手技や足技、時には寝技に長けた野生の教員が、みなさんの荒削りな魂の「音連れ」を待っています。

1980年、京都市立芸術大学陶磁器専攻科修了後、イタリア政府給費留学生として国立ファエンツァ陶芸高等教育研究所にてエトルリアのブッケロの研究を行う。帰国後、沖縄のパナリ焼、西アフリカの土器、縄文期の陶胎漆器の研究や再現を通して芸術の始源の研究を行う。近年はたこつぼ漁、野良仕事に没頭し人間の営みが芸術に変換される視点と場の形成に関する研究を重ね、公開講座「ネオ民芸」を運営する。現在:京都芸術大学教授、滋賀県立陶芸の森館長、IAC国際陶芸学会理事。
文化の前提を点検し、未来の可能性を発見する
お葬式にはなぜ黒い服を着ていくのでしょう? そうするのが当たり前だと思われていることも、少し立ち止まって考えてみると、必然性は揺らいできます。リモートワークの登場が職場と家庭の境界を曖昧にしたように、大きく変化する社会を前にしては、既存の価値観や常識を更新し続ける必要があります。文化の前提を点検し、これまでにないリサーチ手法を用いて、未来の暮らし方を探求する。この領域ではデザインとアートの垣根を超えて、一人一人が「変化に対応する力」を身につけられるように支援します。

DESIGN MUSEUM LAB代表。1978年、青森市出身。東北大学大学院国際文化研究科博士課程を中退後、神戸芸術工科大学研究員を経て、2012年から展覧会企画・編集事務所DESIGN MUSEUM LABを設立。展覧会の企画設計を通して、現代の生活文化を研究。主な展覧会企画:「Perfume Costume Museum」「アニメーション美術の創造者 新・山本二三展」「GOOD DESIGN AWARD神戸展」
超域制作学プログラム
アートプロデュース(後藤・鬼頭ラボ)
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コンテンポラリーアートの最前線を動かす、グローバルな人材を育成する
21世紀に入ってから、芸術を巡る情況はますます活発に、また複雑になってきています。そのなかにあって、今後どのような芸術活動が切り拓けるのか、国際的な視野のひろがりを持って提案できる人材が求められています。このラボは単に、現代アートの研究者、専門家を育成することを目的にしていません。むしろコンテンポラリーアートの最前線の現場、例えば、美術館、ギャラリー、アートブックストア、アートイベントなどの現場、さらにはビジネスの現場で活動できる、即戦力となるプロフェッショナルを育成するためのプログラムを提供します。
ラボの特長
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深さのある現代作家研究、キュレーション研究
激しく流動するコンテンポラリーアートシーンをつかむには、事態のストラクチャーだけではなく、そこでトピックとして浮かび上がっているキーとなるアーティストの「深度のある研究」論文が不可欠となります。丁寧な個別指導を行うことで、スペシャリストとしての確信を身につけてもらいます。
研究対象の例
修了研究では、例えば以下のような作家をとりあげて論じることになります。この他の個人・団体を扱うことももちろん可能です。
- オラファー・エリアソン
- ピエール・ユイグ
- 杉本博司
- ヴォルフガング・ティルマンス
- ウォリード・ベシュティ
- トマス・ルフ
- アピチャポン・ウィーラセタクン
- 名和晃平
- マルレーネ・デュマス
- 草間彌生
主担当教員

大阪生まれ。編集者、クリエイティブディレクター、アートプロデューサーとして活動。YMO、坂本龍一らのアートブックや伊勢丹、GINZA SIXなどの企業キャンペーンのディレクションを手がけるとともに、篠山紀信や蜷川実花らの大型美術館巡回展を成功させる。「篠山紀信展 写真力」は、全国33の美術館で開催され、入場者数は100万人を突破。一方で、若手現代アート作家の発掘・育成・戦略的プロデュースを使命としており、全国の美術大学の卒展から優秀な才能を選抜する登竜門a.a.t.m(アートアワードトーキョー)では15年にわたり500人以上のアーティストを輩出。自身が運営するG/P galleryにおいても、海外のアートフェアにフォトアーティストを次々と送り出し、国際的に高い評価を勝ち得ている。
アートプロジェクト(保科ラボ)
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超越したアートの感触を生み出す
今日、現代芸術作品のありかたは、アトリエ内での個人制作にとどまりません。前世紀後半から、芸術のモダニズムを乗り越えるために、広く社会環境や自然環境との関係性の中で、場所の意味や地域の特性を踏まえた芸術実践が試みられてきました。自然に息づく生命体、風土のもたらす民俗学的造形、共同体における産業文化の記憶などは、今日的な表現課題でもあり、古いものの中にこそ、新しい芸術の手法が隠れています。そして本ラボの芸術実践でも、そのコンテンツは絵画や彫刻などの領域にとどまりません。社会、物質、空間、自然環境、科学、時間、民俗学なども作品制作の媒体として扱い、これらの媒体を相互に関係させ、日常生活に身体が触れた時に起こる感覚や感触を作品化します。そのことを通じて、人間と環境との関わりを、芸術制作という手段によって探究し、地域の現実を明確なコンセプトと的確な技術によってアートに昇華することのできる人材や、さらに地域の芸術、文化をプロデュースできる人材を育成します。
ラボの特長
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修士研究制作(リサーチワーク)
リサーチワークでは、最終的に、特定の地域や場所との関係性によって、自己表現としてのインスタレーションワークを構想します。そのことを通じ、自分の置かれた環境で、どのような作品制作が可能なのかを自ら探究できる能力を身につけます。
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複合演習
地域やメディアなど、様々なアート媒体を複合させて生まれる感触を味わいます。このアートプロジェクトは、芸術の領域を超えて思考し実践していきます。芸術実践でのコンテンツは、社会、物質、空間、自然環境、科学、時間など、日常生活において自分の身体が触れる時に起こる感覚、感触です。それをもう一度、素材やメデイアによる演習を通じ、芸術作品として再構築します。これが作品制作の技術となります。
主担当教員

1953年長野生まれで東京と長野を拠点に活動。日本もの派、榎倉康二、高山登の影響の中、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。同期生に川俣正がいる。ポストもの派世代に属し、木、紙、墨、映像等の素材を用いたインスタレーションや絵画作品制作を展開してきた。日本をはじめスイス、台湾、ドイツ、アメリカ、中国、などで作品発表を精力的に続けている。2002年に文部科学省在外研究員として渡米。2006年から東京藝術大学美術学部教授、美術学部長、理事・副学長を歴任。2020年東京藝術大学名誉教授。
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2024年度 芸術教育分野の
年間スケジュール
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ゼミ日程
以下の京都もしくは東京いずれかのクラスを選択してください。
- 京都クラス
- 4/17(水)、6/12(水)、9/25(水)、10/23(水)、 11/20(水)
- 京都瓜生山キャンパスで開講します。このほか適宜追加が確定次第お知らせします。
- 東京クラス
- 4/13(土)、5/18(土)、6/15(土)、7/13(土)、10/5(土)、 11/9(土)、12/7(土)、2025/01/18(土)
- 東京都港区北青山の京都芸術大学外苑キャンパスで開講します。
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選択必修の現地研修(長野、愛知、宮城ほか)
週末(土日完結)で実施します。日程が決まり次第、お知らせします。
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共通科目(オンタイムの遠隔授業)
日程の都合がつかない場合は、動画の時差配信の視聴が可能です。
教員一覧
専任教員(2025年度予定)
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領域長 服部 滋樹 教授 クリエイティブディレクター、地域ブランディング
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上村 博 教授 美学
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久慈 達也 准教授 思想史、生活文化史
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後藤 繁雄 教授 編集者、クリエイティブディレクター、アートプロデューサー
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酒井 洋輔 准教授 グラフィックデザイン、ブックデザイン、ジュエリーデザイン
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保科 豊巳 教授 現代美術、油画、アートプロジェクト、水墨画、環境アート
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松井 利夫 教授 陶芸、現代美術
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廻はるよ 教授 建築、インテリアデザイン
大学院客員教員(2024年度)
- 尼﨑 博正
- 遠藤 水城
- 岡田 文男
- 片岡 真実
- 鞍田 崇
- 小林 真理
- 島袋 道浩
- 竹内 真
- 中井 康之
- 長島 有里枝
- 額賀 古太郎
- 宮島 達男
- 森山 直人
- 下道 基行
- 杉本 宏
- 青木 芳昭
- 小金沢 健人
- 本間 正人
- 堀部安嗣
- 大坂 紘一郎