なぜ博士課程に進むのか

新たな挑戦の3年間

博士課程へ進学する人は、多くの場合、自分自身で新たな道をきりひらくことができる力をもっているはずです。にもかかわらず、博士課程に進学するのはなぜなのでしょうか。
ここには、3年間という時間を使って新たな挑戦をする機会と、その挑戦意欲を育てる環境があるからでしょう。実際、本学の博士課程は、これまで誰も踏み込んだことのない、新しいテーマを追求し、そして成果を世に問うてきた人を多く輩出しています。
博士課程の学生に接する教員たちは指導者であると同時に、現役の制作者や研究者として、新しいものを生み出すという目標をもち続けています。この点からすると、学生と教員は同じ立場にあるわけです。教員は、学生一人ひとりと向き合い、意見を交わし、新しいものをつくりあげていこうとする学生の良きアドヴァイザー、という姿勢をもっています。博士課程進学者は、こうした機会を存分に活かして、自身を大きく成長させてほしいと思います。

サポート体制
  • 制作系の学生の場合

博士課程では、制作と論文それぞれについて教員が指導にあたります。
制作指導教員と論文指導教員のどちらを主とし、補助とするかは、学生との相談のうえ決定します。

「語る」「書く」ことができる制作者

本学博士課程では、作品制作に取り組む人にも日本語での論文提出を課しています。アーティストが自身の作品について、自身のことばで「語る」「書く」のは今や当然のことです。博士課程に在籍し、論文を執筆することはこうした力を磨くことにもなるはずです。
テーマに沿って調査・研究を進め、大部の論文に纏め上げるのは大変な仕事です。しかし論文を書き進めることで、作品の質も向上します。論文執筆と作品制作を併せておこなうことが非常に良い相乗効果を生むことを、本学の博士課程を過ごした人たちが証明してくれています。論文執筆に不可欠な「論理力」や「構成力」は、制作にも必要だからでしょう。
論文の内容についても、制作者ならではの視点から、非常に独自性の高いものが提示されてきました。ここに、博士課程に在籍しながら制作を続ける意味があると思うのです。

論文執筆の流れ
  • 制作系の学生の場合

制作系の学生の場合、6万字以内の博士論文を執筆することになります。1年生から3年生まで毎年2万字程度の論文を執筆し、博士論文のベースとするとともに、研究の目的意識や内容を深めていきます。

1年生 論文執筆(2万字) 2年生 論文執筆(2万字) 3年生 論文執筆(2万字)

京都芸術大学大学院紀要

制作現場が身近にあることと、研究者への道

主として学術的な研究をおこない、博士論文の提出のみによって学位を取得しようとする、いわゆる研究者への道を歩んでいる人にとって、アーティストが身近にいて、その発想や制作の仕方、感覚的に身につけているものに触れられることは、研究の助けとなるはずです。
最先端の作品が、実は伝統に則って制作されている場合もあるでしょうし、一見伝統的な手法で制作されたように見える作品が、実際には最新の機材や材料などが駆使されていることもあるでしょう。現代を生きるアーティストが、どのように作品を生み出しているのかを間近に見ることによって、自身の研究を進めるための示唆を得ることもあるでしょう。これは本学の博士課程で学術研究をすることの特徴の一つです。
ぜひ、いろいろな人の研究や制作活動に興味を持ち、積極的な交流や対話をおこなってほしいと思います。

博士課程は3年間です。3年後には博士論文や修了制作を提示する必要があります。一方で、これらの成果は一生かけて取り組んでいくべきテーマの、スタートラインともなるはずです。
そんな気持ちで、3年間挑戦し続けてください。

京都芸術大学 大学院 博士課程を紹介|新たな挑戦の3年間 京都芸術大学 | 公式YouTubeチャンネル
河上 眞理
博士課程 芸術専攻 専攻長 河上 眞理 MARI Kawakami

早稲田大学大学院博士課程在学中、N.Y.S.R.グッゲンハイム財団奨学金によりP.グッゲンハイム美術館で研修を受ける。1995年度イタリア政府奨学金留学生としてヴェネツィア・カ・フォスカリ大学文学部美術史学科に留学、翌年博士課程に入学、2001年Ph.Dを取得。在イタリア日本国大使館外務省専門調査員の職を得て日伊交流事業にも従事。2019年より現職。単書に『工部美術学校の研究—イタリア王国美術外交と日本—』(中央公論美術出版、2011年)。共著『辰野金吾 美術は建築に応用されざるべからず』(ミネルヴァ書房、2015年)。

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