学長 - 𠮷川 左紀子
学長就任にあたってのメッセージ
人生100年時代を生きる私たちにとって、社会のさまざまな場における芸術活動はますます重要になり、「芸術とともにある暮らし」がなくてはならないものとなってゆくでしょう。私は、芸術のもつ人間の心を動かす力、人間の心を豊かにする力、そして、心を打つ芸術作品を生み出す人間の力に、強い関心と畏敬の念を感じています。
「芸術の力で、平和で幸福な社会が実現できる」。
「芸術の理想と哲学を探求する大学をつくりたい」。
本学創設者・徳山詳直初代理事長が、今から半世紀以上前に抱いたこうした確信と強い思いが京都芸術大学の源流となり、そこから生まれた「藝術立国」「京都文藝復興」という2つの建学理念は、今も変わらず、本学の教職員や学生たちの精神的支柱となっています。
2020年4月に副学長として着任した私は、コロナ感染の拡大という緊急事態に直面した大学で、徳山豊理事長、尾池和夫学長をはじめ教員、職員の方々が会議を重ね、日々変わる状況の中で次々と意思決定を行い、速やかに新しい教育の仕組みを作り上げる姿に驚嘆しました。インターネットでの授業を全学で実施する仕組みが早い時期に完成し、本学の先生たちは、さっそく『オンラインで行う新しい芸術教育』にそれぞれの工夫をこらし、キャンパスから離れた地でモニターを見つめる学生の皆さんに、日々、講義を行いました。
「授業が途中でストップしてしまっても、『先生がんばれ!』というエールが受講生から飛んでくるんですよ」と笑顔で語る先生たちや、それを支える職員の人たちと言葉を交わしながら、新しい芸術教育の未来は、危機の中での知恵や工夫から誕生するのではないか、と実感する1年でした。こうしたしなやかな対応力と活力は、芸術を生み出す闊達な創造力、想像力とも呼応して、本学の大きな魅力であると思います。
本学が創立30周年を迎えた2021年春、私は学長に就任しました。
人生100年時代における本学の使命は、10代、20代の若い人たちはもちろんのこと、80代、90代に至るまで、どの世代の人たちにとっても魅力ある大学として、質の高い芸術教育を実践することであると考えます。芸術家として、研究者として、作家として、デザイナーとして、学術研究の場や国際社会の現場で活躍する多くの先生たちが、学生の皆さんを待っています。私は、多様性にあふれ、活き活きと展開される本学の芸術教育を、より一層充実させることに全力を尽くしたいと思います。
皆さんとともに学び、語り合う時間を楽しみにしています。

学長
𠮷川左紀子 Yoshikawa Sakiko
京都大学教育学部卒業。京都大学大学院教育学研究科博士課程認定退学。博士(教育学)。追手門学院大学助手、助教授、英国ノッティンガム大学客員研究員、京都大学大学院教育学研究科助教授、教授を経て、2007年、京都大学こころの未来研究センターにセンター長として着任(2018年3月まで)。京都芸術大学文明哲学研究所所長。京都大学名誉教授。京都大学フィールド科学教育研究センター特任教授。専門は認知心理学。主な研究テーマは、顔や表情を通しての他者の感情理解で、対面コミュニケーションに関わる認知・感情・行動特性について研究してきた。京都市社会福祉審議会委員、京都市はぐくみ推進審議会特別委員、日本ユマニチュード学会理事。日本心理学会研究奨励賞(1996年)、日本心理学会優秀論文賞(2017年)、京都府あけぼの賞(2018年)受賞。