デザイン工芸研究センター

撮影:中尾あづさ

センターの名前にある「デザイン工芸」には、デザインと工芸という二つの領域を含むという意味だけではなく、この二つを一体のものとして考えようとする意図が込められています。つまり伝統的な工芸の中に新鮮なデザイン感覚を見出し、また現代のデザインを伝統的な知や技術によって裏打ちすることです。そこから見ると、工芸とは古いもの、ただ護るべきものといった先入観こそ、もはや決定的に遅れた考えだと言えるでしょう。

京都という場所

京都は、長い歴史を持つ文化と伝統があるばかりでなく、それらが人々の生活の中に深く根付いている場所です。工芸を新しい観点から学び、その未来への展開を考えるには、世界で最も有利な場所だと言っても過言ではありません。デザイン工芸研究センターはこの地域性を活かし、継承された技法を新しいコンセプトと融合することで、世界の人々の心に届くデザイン感覚を備えた工芸品、そして工芸文化それ自体の新たな価値を創造し、国際的に発信することを目的としています。

手仕事の背後に広がる世界

工芸とは、手仕事を中心とする制作とその背景にある文化のことです。モノ作りの活動は常に、それを生み出す世界観と結びついています。デザイン工芸研究センターでは、人間がその手でモノを作るという活動を通して、人類の悠久の歴史や文化、やがては近代的な機械的工業生産へと発展する私たちの文明について考えます。新石器時代から最先端テクノロジーまで、そもそもヒトがモノを作るとは何か?という哲学的な問いを大切にしています。

藍染作家 梅崎由起子作品

西陣織プロダクト(撮影:中尾あづさ)

多様な分野で学ぶ大学院生のために

工芸についての知識やそれに内在するデザイン感覚に触れることで、工芸以外の領域における大学院生の方々も、自分の研究・制作を新たな視点から見直すことができます。また工芸に関わる技能・デザイン・情報スキルの習得を通して、研究における視野、制作における表現の幅を広げることができます。さらには今後ますます必要とされる、文化芸術とビジネス・産業とを媒介するキュレーター的な役割についても、広く学ぶ機会が得られるはずです。

新しい芸術人材の育成

京都はもちろん各地の研究所・工房を学びの場とすることで、手仕事、工芸技術の奥深さを理解し、他の領域へと紹介することのできる、ハイレベルの人材教育を行います。伝統を若い世代の感性へと橋渡しし、留学生を通して世界との交流を促進することで、工芸分野が直面する後継者や材料不足、工芸品の販売減少といった課題に対しても貢献します。グローバルな視野とローカルな文化への眼差しを併せ持った「デザイン工芸」の知識とスキルを備えた人材は、日本はもちろん世界で将来ますます必要とされてゆくと思われます。

藍生かし直し展(撮影:中尾あづさ)

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