日本庭園・歴史遺産研究センター

上:日本庭園研究部門、下:歴史遺産研究部門

日本庭園研究部門
(庭園文化研究領域・文化財庭園保存修復領域)

「自然と人間の深い関わりを解く鍵としての日本庭園を」

日本庭園研究部門( 旧・日本庭園研究センター) は、1996年に設立された日本庭園についての専門研究機関です。日本の庭園文化に関する特色ある研究のほか、地方公共団体など多方面から、歴史的庭園の保全や活用に関する調査(文化財指定に向けての歴史文化的調査、実測平面図作成、保存活用計画策定支援、保存整備計画・実施設計など)を受託しています。日本庭園は、自然と人間の深い関わりの中から生まれ、育まれてきました。それは人間の心の深さの表現であり、心地よい生活環境の追求でもあるといえます。現代文明は自然環境を改変しながら急速な発展を遂げてきた一方で、個人・社会・地球といったレベルでの矛盾を抱えることにもなりました。私たちは日本庭園を通して、これらの矛盾を解決する糸口をつかみたいと考えています。特に最近の新型コロナウィルスの世界的流行によって、私たちは身近な日常生活空間のありようを見直すこととなり、日本庭園の存在は今後ますます重要になってくることでしょう。

本研究部門では、造園やランドスケープデザインといった従来の専門領域からだけでなく、建築をはじめ、美術・工芸、哲学や宗教、歴史文化など、さまざまな視点で日本庭園を捉えていきます。また、すべての研究は、庭園をつくる人、守り育てる人との交流をはじめ、庭園の現場に立つことを基本に進めています。そして、受託研究のほか自主事業として公開講座「庭園学講座」を開催し、庭園文化の魅力や、庭園文化の根底にある人と自然のありかたを探る活動を行なっています。このほか、海外における日本庭園文化の理解と普及啓発をめざし、外国人研究者・技術者を対象とした「インテンシブ・セミナー」も開講しています。

これまで受託したプロジェクトには、「史跡名勝平等院庭園保存整備事業実施設計ならびに施工監理」(宗教法人平等院)、「旧島津家玉里邸庭園修復整備基本設計」(鹿児島市)、「名勝玄宮・楽々園ならびに名勝旧彦根藩松原下屋敷庭園の植栽整備」(彦根市)、「名勝会津松平氏庭園の池護岸修復」(会津若松市)、「名勝西福寺庭園の修復整備実施設計」(敦賀市)などがあります。私たちの研究成果は、公開講座や講演会、あるいは研究紀要などの出版によって情報発信しています。文化財庭園の修復・整備の設計や施工・維持管理などには、環境デザイン学科や歴史遺産学科の学生、大学院生も積極的にかかわり、研究・制作の深化をはかっています。

大学院教育との連携

大学院生は、修士・博士課程を問わず、本研究部門が行なう共同研究会に参加することによって庭園文化に関する研究にとりくむほか、公開講座の運営や受託調査・研究に携わることで実践的な活動を行なうことができます。 また海外には数百にも及ぶ日本庭園があり、現在アメリカ、カナダ、オランダ、オーストリア等と交流を行なっています。大学院生は「インテンシブ・セミナー」の企画運営を通じて海外の研究者・実務者と積極的な関わりを持つことができます。大学院修了者はこれまで、研究者、文化財保護行政担当者、文化財庭園保存技術者などの職についています。

歴史遺産研究部門
(文化遺産研究領域/文化財保存修復領域)

「歴史遺産保全学の確立をめざした実践的活動」

歴史遺産研究部門(旧:歴史遺産研究センター)では、京都の文化遺産をはじめ、世界遺産も視野に含めたさまざまな調査・研究・保存の実践活動を行なっています。学外の専門家とも連携しての活動内容は、地域活性化を目的とした文化遺産の調査研究、災害時における歴史資料の救援といった、地域と密接に結びついた文化財・歴史遺産の保護活動の支援、大学内の専門施設を利用した伝世品の調査、保存処理など、多岐にわたっています。

今後は「歴史遺産保全学」の確立をめざし、調査・研究・保存の実践活動を展開していきます。これは歴史学や保存科学、保存修復などの諸分野が連携を深め、埋もれている文化遺産を発掘するとともに、そこから歴史を読み取り、後世へ伝えていくための方策も併せて考えていくものです。その歴史遺産保全学をキーワードとして、本学の他附置研究センターや学外諸機関とも密接に連携をとっています。本研究部門が受託する事業は、教員(研究員)を中心に学生・院生が参加するプロジェクトとして実施していきます。

受託する主なものは、地域資料(古文書・書画・生活資料等)の調査・保存修復・活用支援、博物館の収蔵資料に対する材質や状態の調査ならびに保存修復などです。

これらのプロジェクトは学内で行なうものと現地に出向いて行なうものがあります。しかし、何れも専門性の高いものばかりであり、学生にとっては、こういった外部からの委託事業に参加することで、授業だけでは得られない、より実践的な経験を積むことができます。一方、大学の研究センターが業務を受託することで、領域を越えた研究者や専門家等との連携による学術的な展開を得ることができます。こうした実践活動を通して文化遺産研究、文化財保存修復研究の拠点として、成果を学外・学内を問わず報告会、ワークショップ、シンポジウム等の形で広く社会に還元していきます。

大学院教育との連携

本研究部門は歴史遺産学科の教員を中心に構成されています。大学院生はセンターで開講される専門的な講座や研究会に参加するだけでなく、研究者とともに調査・研究あるいは保存修復活動に直接関わります。それにより各領域への幅広い知識を得、また実践を通じて技術を体得することができます。

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