卒業生紹介

京都芸術大学を卒業し、
活躍している先輩を紹介します。
卒業生インタビュー

蒲池郁弥さん

JIKAN Design 映像デザイナー

楽しいから、つくり続ける。続けることで、得られたもの。
―多くの情報と想いを込められる3DCGの魅力に惹かれ、映像表現の世界へ。

はじめの2年くらいは、悶々としていた。

蒲池さんが、芸大をめざしたきっかけを教えてください。

蒲池
けっこうふわっとしていて。姉が京都芸術大学に通っていたし、僕自身も絵画を習っていて美術が得意科目だったし、ここなら楽しそうかなと。

確かに、ふわっとですね(笑)。

蒲池
机に向かってガリガリ勉強する!みたいなのに苦手意識もあったので、、。芸大ならそういうことだけではないのかなと。

今は映像を仕事にされていますが、出身は情報デザイン学科ですよね?

蒲池
高校生の時からYouTubeでミュージックビデオを見たりするのは好きだったので、映像に興味がなかったわけじゃないんです。でも、グラフィックデザインの方が様々な場所で求められるだろうと勝手に思ってて。

それで、情報デザイン学科に。

蒲池
安易な考えでしたけど、そのまま職業にできるというか、社会に出やすそうだなと思ったんです。

なるほど。在学中はどんな学生でした?

蒲池
さっきも言ったように、「美術が得意だから」くらいの気持ちで入学したので、はじめは全然デザインに夢中になれなくて。

それはいつ頃まで?

蒲池
どうだろう。2年生の終わりくらいまで悶々としていたんじゃないかな。突き抜けられないな、という感覚があって。当然課題でもいい評価はもらえないし、バイトばっかりしていました(笑)。

2年生の終わりに、なにか転機があったんですか?

蒲池
特別授業で、3DCGの存在を知ったんですよ。先生が3DCGソフトの「Cinema 4D」を紹介されていて。学生なら無料で使える、ということだったので「やってみようかな」と。

深く知りたいと思える表現を見つけ、気がつけば夢中になっていた。

興味を持った理由は?

蒲池
当時はまだまだ新しいツールで、周りの人もあまり使っていませんでした。「これを自分の武器にできれば」、と思ったのが大きいですね。

じゃあもう、独学で?

蒲池
そうですね。YouTubeでチュートリアルを見たりして。スタートは人と違う武器が欲しい、という動機だったんですけど、さわっているうちに「おもしろいぞ」と、夢中になっていったんです。

どんなところに面白みを感じていたんですか?

蒲池
平面の表現と違って、3DCGは立体的な奥行きを活かした描写や、それをさらにアニメーションさせるってなった時に、画に込められる想いや情報量が多いんですよ。単純に表現の幅がどこまでも広がっていった感覚というか、、。あとは、ツールをさわっているなかで、シミュレーション機能にワクワクさせられることが多くて。

シミュレーション機能?

蒲池
たとえば、やわらかくしたオブジェクトを壁にぶつけると、その衝突を判定して描画してくれるんです。数値によって、オブジェクトが破綻したり、しなかったり。そのプロセスの中で意図せず面白い画になることがあって、、。デザインという多くをコントロールしなければいけない分野にいたからこそ、こういった偶発的な、自分でコントロールしきれない部分に惹かれていった気がします。

デザインに対しての熱量も上がっていった?

蒲池
3DCGを使うようになってから、デザインに対しても見方が変わっていって、前向きに捉えるようになりました。課題では勝手に3DCGの要素を盛り込んだりして、強引に自分を表現するようになったというか、、(笑)

自分の作品で、爪痕を残したい。卒業制作で優秀賞へ。

2年生まで悶々としつつ、「自分の武器」を探していた理由は?

蒲池
バイトばかりしていた学生ではあったんですが、芸大に来たからには自分が作ったもので爪痕を残したいなとは思っていて。特に意識していたのは、卒業制作ですね。

4年間の集大成ですもんね。

蒲池
先輩の卒展を見て、「すごいな」と。1年間、ひとつの作品に時間も意識も全力で注ぐ経験なんて、今後一生できないはず。ここで頑張るしかないだろう、と。

卒業制作で、優秀賞を獲得されていますよね?

蒲池
やるなら、賞は獲りたいなと思っていました。4年生までは特にこれといった評価を受けていなかったので、ここでなんとか、という気持ちもありました。

3DCGという武器を携えて挑んだわけですね。

蒲池
周囲より、かなり早く制作に取り組んでいた気がします。テーマも、賞を意識して早めに決めたりして(笑)。

そうしてできたのが、この「A&N TOYS」のインスタレーション。

アルファベットと数字をモチーフにした、光と影と、映像のインスタレーション。

蒲池
卒展では、平面のアルファベットと数字を立体的に捉えてオブジェクト化し、それを3Dプリンターで出力して展示。平面のモチーフを立体化して、そこにプロジェクターの光を当ててまた影という平面に戻して……という空間を使ったインスタレーションを行いました。

受賞が決まったときは、どうでした?

蒲池
いや、もうめちゃくちゃうれしかったですね(笑)。「この空間そのものが、蒲池くんが日頃さわっている3DCGの操作画面に似ているよね」とか、自分自身では気づいていなかった作品のおもしろさを感じてくれている先生もいて。

「爪痕を残す」という目標も達成されて。

蒲池
ただ、賛否両論な部分もあったんですよ。褒めてくれる人もいれば、そうでない人もいて。批判的な意見を聞いたときは、ショックを受けたりもしました。

なるほど。でも、「もうつくりたくない」とはならなかったんですね。

蒲池
ちょっとショックだわ、という話を、卒展を見に来た母に話したんですよね。そしたら「作品を発表すれば、当然いい意見も悪い意見も出てくる。でもそれは、あなたがつくることを諦めなかった証拠じゃない?」と言ってくれて。

素敵な言葉ですね。

蒲池
めっちゃ泣きました(笑)。そうだよなって。つくること自体は、やっぱやめたくないなって母の言葉で思えたんですよね。

3DCGのために始めた映像制作が、いつしか仕事に。

映像を仕事にしようと思ったのは、いつ頃から?

蒲池
映像をつくり始めたきっかけも、3DCGなんですよ。立体的な表現をフルで生かすなら、静止画よりもアニメーションだなと思って。

3DCGが、今の仕事のきっかけなんですね。

蒲池
そうですね。3DCGで始めた映像制作が仕事になって、就職してからは実写の仕事もさせてもらうようになって。どんどんフィールドが広がっていっています。

やっていくうちに。

蒲池
そう。やっていくうちに、いろんな世界が見えるようになってきました。最近ではコンテも考えたり、遠方までロケ撮影したり、実写の編集までさせていただいたり。

Technics SL-1200MK7のPRムービー。
回転する床や落ちてくるレコードのアニメーションを担当。

3DCGをきっかけに世界が広がっていますね。

蒲池
「こういう映像デザイナーになるぞ!」っていう目標は明確にはないんですよね。今はただ映像制作を楽しんでいるだけなので。成果や技術は、そのあとから、知らず知らずついてきている感じです。

自主制作も続けられているんですか?

蒲池
会社として、抽象映像の展示上映イベントも行っているので、スピード感はゆっくりですが、つくり続けています。作品づくりは、やめたくないなと思っていますね。

それはどうして?

蒲池
「つくり続ける」っていうのは、僕の人生の目標のひとつなのかもしれません。今の自分がいられる環境も、周りにいてくれる人たちも。自分がつくってきた作品たちが築き上げてくれているところはあると思うので、、。つくることをまだまだ楽しみたいと思っています。

手を動かしながら、好きなことを見つける。それが、自分だけの強みになっていく。

最近は映像がより身近なメディアになって、この業界をめざす人も増えていますよね。

蒲池
そうですね。誰でも気軽に映像をつくって、発信できる世の中になってきていて、、。僕も置いていかれないように、日々勉強中です。

これから映像業界をめざすみなさんに、伝えたいことはありますか?

蒲池
映像は、勢いがあるぶん変化が速く、競争も激しい媒体だと思うんですよね。新しい技術や手法も次々に出てくるし、トレンドもどんどん変わっていっているだろうし。

たしかに。

蒲池
そういうスピード感に翻弄されて、「映像は好きだけど自分にはスキルがないからな」とか「つくりたいものが特にないからな」と、足踏みしてしまうのはもったいないかなと。

動いてみることが大事?

蒲池
映像関係だけでなく、映像以外にも様々なものに触れてみることです。「いいな」と思うものを吸収しながら、とりあえず手を動かしてみる。そしたら段々と「自分はこれをおもしろいと思っている」という表現ができるようになるんじゃないかなと。

自分らしさ、みたいなところ?

蒲池
映像は、つくり手によるアウトプットの違いが明確に出るメディアだと思うので。「自分はこれが好き」「これをおもしろいと思う」という考え方を見つけて、表現できるようになれば、自然と自分の強みになっていくんです。

蒲池さん自身も、そうですよね。

蒲池
目標とかゴールとかが、具体的じゃなくても全然いいと思います。とにかく映像が好きなら、触れてみること。その結果として様々な評価や経験を得ることができるかもしれない。そういった経験が自分の支えになり、原動力となってくれるはずです。

本日は、貴重なお話をありがとうございました!

 

取材・記事|久岡 崇裕(株式会社parks)

 

卒業年度・学科
2021年
情報デザイン学科 卒業
出身高校
大阪府立東淀川高校
プロフィール
在学中に3DCGの表現に魅了され、3Dアニメーションの制作をスタート。卒業後は映像制作を主戦場とする有限会社JIKAN Designに就職。音響ブランドTechnicsのPR動画や、NHKドラマ『探偵ロマンス』オープニング映像などのCGIを担当。

作品

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映像作品"Curved Memories"。クライアントワークだけでなく自主的にアート作品の制作も続ける。

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