卒業生紹介

京都芸術大学を卒業し、
活躍している先輩を紹介します。
卒業生インタビュー

長谷川裕也さん

株式会社FiG代表/インテリアデザイナー

遙か遠くの憧れも、自分が動き続ければ、近づいていく。

寄りと引き、視野を切り替えながら進む方が、自分に合っていると思った。

長谷川さんは、どうして空間のデザインに興味を持たれたのですか?

長谷川
子どもの頃から、いわゆる“サラリーマン”になるイメージが持てなくて。料理人や美容師などクリエイティブな仕事につけたらいいなと漠然と考えていました。高校生で進路を考える時期にはジュエリーデザインに興味があって、それで京都芸術大学のオープンキャンパスに参加したんです。

もともとは、空間ではなく、ジュエリーのデザインだったんですね。

長谷川
そのときに環境デザイン学科の話も聞いて、それまではひとつのプロダクトに向き合うことしか見えてなかったんですが、もう少し範囲を広げてみるのもいいなと感じました。

どうして、そう思ったのでしょう?

長谷川
オープンキャンパスにいらっしゃった先輩たちがとても素敵だったということもありますし、インテリアのデザインには、家具やプロダクトも含まれるので、「ここならもっと視野を広げてデザインに携われるかもしれない」と思ったんです。

オープンキャンパスがきっかけで、選択肢が広がったんですね。

長谷川
インテリアデザインは、ミリ単位で家具のディティールを詰める作業から、空間全体の美しさまで、幅広く考える必要があります。自分は同じことをずっと続けるのが苦手な性分ので、“寄り”と“引き”を行き来しながら考えるデザインを進め方が、自分に合っていると感じました。

ひとつの空間を、いろいろと視野を切り替えながら考えていくのって、大変そうですが、面白そうですね。

自分もこんな世界観をつくりたい。強い憧れに出会えた。

入学後は、どんな学生生活でしたか?

長谷川
1年生の頃は、普通科から進学したこともあって、全く知識もなくて。高校の頃から建築系の学科で学んできた人たちが一歩先を進んでいるような焦りもありました。手探りではあったものの、「インテリアという軸が自分に合っているのかな?」「ランドスケープも面白そうだな」と、視野を広く持ちながら学んでいました。

幅広く学ぶ中で、何か変化はありましたか?

長谷川
2年生になって授業や先輩たちの作品に触れる中で、心を打たれるデザインに出会うようになりました。そこから、自分のつくりたい世界観が明確になっていきました。

2年生のときにもう、自分のつくりたい世界観が? かなり早いですね!

長谷川
特に心を打たれたのが、GLAMOROUS(グラマラス)というデザインオフィスが手がけた、新宿伊勢丹のリモデルプロジェクトです。衝撃だったのが、エスカレーターホールのデザイン。黒く美しく輝く造形が、強いアクセントになっていて、その存在自体が“場所の手がかり”になっていました。

場所の手がかり?

長谷川
はい。美しく印象的なホールが、広い百貨店の中で目印となって、今どこにいるのか直感的にわかるようになっているんです。美しさを機能にまで昇華させていて、「自分もこんな世界観をつくりたい」「GLAMOROUSで働きたい」と、強く憧れを抱くきっかけになりました。

憧れの存在と出会えたんですね。

長谷川
今でこそ、百貨店のリニューアルは主流になっていますが、当時はまだ大々的なリニューアルは珍しくて、百貨店の売上向上にも大きく貢献していました。

ただ空間が美しい、かっこいいというだけじゃなくて、ビジネスとしても成功させているんですね。すごいな。

熱量と行動力で、憧れとの距離を縮めていく。

2年生で憧れの存在に出会えて、そこに近づくために、どう動いていったのでしょうか?

長谷川
インターンに行きたいという気持ちはありましたが、GLAMOROUSは業界でもすごく有名なので、「自分が行けるわけがない」と思っていました。でもある授業で、先生に「GLAMOROUSが好きなんです」と話したら、「インターンに行ったらいいやん」と言われて。「え、できるんですか? 僕なんて無理ですよ」と返したら、「行ける行ける!」って(笑)。

行ける行ける!(笑)。こっちの迷いを吹き飛ばしてくれるような言葉ですね。

長谷川
そこから、どうすればインターンに行けるだろうかと真剣に考えて、GLAMOROUSがデザインを手がけた京都のsinamoというお店でアルバイトを始めたんです。

すごい行動力!

長谷川
ランチタイムの終わり頃を狙ってご飯を食べに行って、他のお客さんがみんな帰った後に「ここでアルバイトをしたいんです」と直接お願いしました。空間を見るだけでなく、実際に働いて、もっと深く知りたかったんです。

デザインされた空間を見に行くだけじゃなくて、実際に働いてみるところまでする人は、初めて聞きました。

長谷川
GLAMOROUSの代表、森田さんがお店に来ることがあると聞いていたので、「いつでもポートフォリオを出せるようにしておこう」って。すると働き始めて1ヵ月で、森田さんが現れたんです。まだアルバイトとしても仕事を覚えている途中だし、ポートフォリオも完成していない状態だったけど、これはもう声をかけるしかないと腹を決めて、「インターンに行かせてください」と直接お伝えしました。

すごい。憧れの人に直接。

長谷川
そしたら、「うん、いつでも来ていいよ」と言ってくださって。夏休みにインターンに参加させてもらうことが決まりました。

遠かった憧れが、一気に近づいた瞬間ですね。

他の世界も見たうえで、それでも「ここがいい」と言えるように。

実際にインターンにチャレンジしてみて、いかがでしたか?

長谷川
東京で建築を学んでいる人たちや、同世代のライバルがたくさんいて、「自分が卒業するときに採用枠は残っているだろうか?」と不安にもなりました。それでも、自分は絶対ここに入りたいと考えていたので、他のデザイナーさんがつくった空間も、できるだけ多く見に行くようにしました。

他のデザイナーさんがつくった空間を?

長谷川
「ここしか知らないから、ここがいいんでしょ?」と言われてしまわないように、他の世界もしっかり見たうえで、それでも「ここがいい」と言えるようになりたいと思ったんです。

すごい熱量です。

長谷川
関西でインテリアデザインの第一線にいる方々のもとにもインターンに行きましたし、GLAMOROUS出身のOBの方々のことも調べて、その中の一人のもとでもインターンをさせてもらいました。デザインのアイデンティティがどう受け継がれているのか、見ておきたかったんです。

OBの方のところまで!圧倒的な行動力です。

長谷川
とにかく動いて、多くのデザインに触れる中でも、憧れが揺らぐことはありませんでした。

いろいろなデザインを見たうえで、GLAMOROUSの魅力ってどんなところにあると思いますか?

長谷川
GLAMOROUSのデザインは、コンセプトやディティール、機能性を突き詰めながらも、商業空間として「直感的にいい」と感じられる強さと美しさがあります。意味を説明されなくても、空間に入った瞬間に別の世界に包まれる。その力が、決定的に違うと感じました。

最終的に、どうやって入社が決まったんでしょうか?

長谷川
全国で見て回った200件ほどの空間の写真を、スゴロクのようにレイアウトして、最終ゴールや50番、100番などのキリ番を、すべてGLAMOROUSがデザインした空間の写真にしました(笑)。結果的に独立するまでの6年間、お世話になりました。

ひとつずつ、自分の身体に、体験を蓄積していく。

入社されてからは、どんな風に仕事してこられましたか。

長谷川
とても忙しい日々でしたけど、“エンジンのかけ方”みたいなものは大学時代に身についていたので、乗り越えられた部分も多かったと思います。やらなくちゃいけないときって、あるじゃないですか。そういうときにちゃんと全力で向き合う姿勢は、大学の課題やプロジェクトを通して養われたかなと思います。

社会に出てからそれを身につけようとするのと、学生時代からそれを経験しているのとでは、大きな違いになりそうです。

長谷川
それから、仕事を始めてからも、時間をつくっていろいろな空間を見に行っていました。学生時代に先生から「僕らの仕事はいいとこ探しだから」と言われたことがあって。デザインにおいてもだけど、生きていく中でも、人の悪いところを見つけるより、良いところを見つける方がいいよなって。偏らずに、いろんなところに行って勉強を続けていました。

素晴らしいですね。

長谷川
GLAMOROUSのクライアントは、富裕層の方も多くて、いろいろな物や空間に触れてこられています。だから自分自身も、大衆的な居酒屋からフレンチの高級店まで、幅広く体験することを大事にしてきました。テーブルのサイズ感や、席同士の距離が、どんな風に空間体験やサービスの質に影響を与えるのか。そういうことを、自分の身体で体験して学び取っていくことが大事だと思います。

ひとつずつ、自分で実際に身を置いて体験して、蓄積していったんですね。

独立して、人と人との信頼関係のもとで仕事をしていく。

長谷川さんは、GLAMOROUSに勤めた後、2021年に独立してFiGというデザインオフィスを立ち上げています。独立のきっかけはあったのですか?

長谷川
5年ほど経験を積んで、そろそろ次のステップを考え始めたのですが、GLAMOROUSへの憧れが強かった分、他の会社で同じ熱量を持てる場所に出会えるかは正直わからなくて。それなら、一度自分でやってみようと。

不安はありませんでしたか?

長谷川
当時は27才で、もし失敗してもまた別の道でやり直せるかなと。もちろん、失敗するつもりはなかったですけれど。一度は挑戦してみようという気持ちでした。

そこから、どんな風に仕事が広がっていったのですか?

長谷川
飛び込みの営業やSNSでの集客みたいなことはしていません。ちゃんと信頼関係を築けた人と仕事をしたいという想いがあって、人と人とのつながりの中で仕事が生まれていきました。
はじめの頃は、上京してからずっと通っていたお店の2号店を任せてもらったり。

素敵ですね。自分が通っていたお店からデザインを依頼されるなんて。

長谷川
「独立するので、周りでお店を出される方がいたら紹介してください」と話をしていたら、「うちやってよ」と。「僕でも実績とかないんですけど…」と躊躇していたら、「いけるっしょ」って(笑)

いいなぁ。周りの人と良い関係を築いてるからこそ、仕事が回っていくんですね。

長谷川
そこは大事なところかな、と思うので、飲みの場でのコミュニケーションも大事にしています。

その店舗ならではの心地よさをつくり出すために、椅子も一からデザインする。

最近は、どんな仕事を手がけられているんですか?

長谷川
今はスイーツやベーカリーの仕事が多くなっています。今、めっちゃパフェ食べてるんです。インスタもほぼパフェの写真です。

(笑)。分野を絞ることで、仕事も次々とつながっていきそうですね。

長谷川
そうですね。でも、同じデザインの繰り返しにならないようには、すごく意識しています。ご依頼いただいた方のために、その空間にあった居心地をつくりたいんです。だからご予算が許す限りは、椅子やソファ等の家具もデザインさせてくださいって。

すごい。椅子やソファも、一からデザインするのですね。

一つひとつの空間に“キャラクター”を宿し、人の記憶に留めていく。

インテリアデザインの役割や可能性について、どう感じていますか?

長谷川
空間のデザインは、より大事になってきていると思っています。飲食店の方とお話をしていても、「おいしい」のはもう当たり前。おいしいから流行るわけでもないし、かと言って、空間が良いから流行るわけでもない。その両方が備わっていて、そこにきちんとサービスがシンクロすることで繁盛店になる。

おいしさと、空間の良さと、サービス。全部がつながっていることが大事なんですね。

長谷川
そんな中で、自分はよく“空間のキャラ付け”が大事だという話をしています。今の時代、SNSもあるし、日々すごい量の情報を浴びている。だから最近行ったお店の名前を思い出せないなんてこと、よくありませんか?

たしかに、ぱっと思い浮かばないことがあります。

長谷川
だから、「あの緑のお店」「赤いお店」とか、空間的なキーワードをきっかけに思い出してもらえるようなお店をつくれたらと思っていて。

なるほど。面白いですね。

長谷川
色だけじゃなくて、入り口をあえて分かりづらくして、お店に入るまでの体験を豊かにしたり、パフェの写真に映り込んでいる背景を見て「あっ、ここあのお店だ!」ってわかるように工夫したり。そういうことを常に心がけています。

制作事例1

「Constellation」神奈川県横浜市のデザートバー

制作事例2

「ちひろ菓子店FINANCIER FACTORY」大阪府箕面市のフィナンシェ専門店

制作事例3

「Remake easy」大阪府大阪市心斎橋のパフェバー

その空間がSNSにどう投稿されるかだったり、どう思い出してもらえるかだったり、先の先までイメージされてるんですね。

長谷川
この店舗では、友だちとワイワイ楽しんでほしいなとか、距離を縮めてデートしてほしいなとか。いろいろなことを考えながらプランを立てて、その通りの光景や投稿に出会えると、やっぱりうれしいですね。あと、自分がデザインさせてもらった空間で食べるパフェは、めっちゃおいしいです(笑)

それはとても羨ましい(笑)。自分でデザインした空間でパフェを食べるなんて、最高の贅沢ですね。

長谷川
インテリアデザインは、お店の将来を左右する責任の大きな仕事でもあって。竣工した後もお店のことが気になって、何度も通うこともあります。デザイン料をぜんぶ還元するくらいの勢いで(笑)

すごく深いところまで、クライアントさんのことを考えているなと感じます。さいごに、この記事を読んでくれている高校生のみなさんにメッセージをいただけますか?

長谷川
やっぱり、「憧れを持つこと」かなって。

憧れを持つこと。

長谷川
自分は、大学2年生のとき、GLAMOROUSがつくったお店に飛び込んだ一歩が、今につながっています。好きなものがあれば、まず見に行く、触れる。憧れに駆られて動いたからこそ、見える景色が変わり続けていって、いつか想像を超えていけると思います。

憧れに近づくために動き続けた長谷川さんならではのメッセージですね。これからのご活躍も楽しみです。今日は貴重なお話をありがとうございました!

 

卒業年度・学科
2016年
環境デザイン学科 卒業
出身高校
関西大倉高校
プロフィール
株式会社グラマラスで約6年間経験を積み、2021年FiG(フィグ)設立。店舗設計を中心に、インテリア・家具・プロダクトと多岐にわたるデザインを手がける。International Design Pioneer Award、日本空間デザイン賞、CS Design award受賞。

作品

picture

「STORIARE」東京・大手町のイタリアンレストラン

  1. Home
  2. 学生生活・就職
  3. 卒業生紹介
  4. 卒業生紹介(長谷川裕也さん)

毎日更新! 公式SNS

公式SNS紹介