Interview #3 京都芸術大学 教授/ウルトラファクトリー ディレクター ヤノベケンジ

  • Interview

大学の原動力となり、世界へ伝播する創造の熱源に。

日本を代表する現代美術作家・ヤノベケンジ。アーティストとして活躍する彼が拠点とする「 ウルトラファクトリー 」は学生で賑わっている。なぜここで学生と協業するのか、その真意を伺った。

京都芸術大学内の「ウルトラファクトリー」にて撮影。ここには工作機械と金属加工、樹脂成型、木材加工、シルクスクリーンの設備を完備。ヤノベ氏の作品の一部も鎮座する。

「ウルトラファクトリー」という工房は、学内でどういう存在ですか?

 ウルトラファクトリーは、2008年にオープンした全学共通の工房です。当時は学科ごとに工房が分散していたため、大学の方針でひとつに統合することになりました。学年や学科を問わず誰もが自由に使えて、豊富な設備と常駐する専門スタッフからのアドバイスも受けられる。いわば「図書館の工場版」のような場所です。ただそれだけでは可能性の拡大にはならないので、一流のトップクリエイターが学生と作品を作る実践教育プログラム「ULTRA PROJECT」を取り入れました。2008年は私のアートプロジェクトから始まり、名和晃平さんのプロジェクトなども並走し、その後は劇団四季の『キャッツ』の舞台美術制作やビートたけしさんとの作品制作、明和電機のイベントが行われ、アニメーターの米山舞さんも参加するなど、この工房の魅力に取り憑かれて集まる人が増えてきました。ここは何もないところから物が生まれる現場であり、学外から多くのクリエイターが自主的に参加しています。「普通の工房を超越するウルトラな工房」の意味で工房名も私が付けました。

ヤノベさんは個人でアトリエを構えることもできたのに、なぜ大学内の工房を拠点にしたのですか?

 私が教員になる前に、金沢21世紀美術館で行った半年間の滞在制作では、地元の学生や市民も参加し、彼らがクリエイターへと目覚めるなど大きな教育効果を実感しました。この経験から、共同プロジェクトは教育効果が大きいと考えるようになりました。学園から共通工房のディレクター就任のお声がけをいただいた当時、私には教育機関に入るとアーティストの道を諦める状況になるのではないかという懸念がありました。でも金沢での共同プロジェクトを教育改革として成立させれば、現役のアーティストとして活動しつつ教育にも貢献できる、きっと新しい挑戦ができると考えました。また、芸術教育により世界を変えていくという本学の理念「藝術立国」にも非常に共鳴して、ここを拠点に決めたのです。

共同制作は利点がある一方で、自分の作品に他人が触れたり、制作過程を見られたりすることに懸念や抵抗はなかったのでしょうか?

 私は現役のアーティストだからこそ学生に教えられることがあると思っていて、教育機関に入るからには、すべてを開示する覚悟を持っていました。制作を見られたくない、技術を隠したいという発想には至らなかった。この工房のマニフェストは、「目撃せよ! 体感せよ!盗め! ともに走れ!」です。盗めるものは盗んで、自分のものにし、自身のクリエイティブや、生き方の糧にしてほしい。だからこそ嘘偽りなく、失敗も含めてそのプロセスは全部見せる。それが私のできる最大の教育メソッドだと思っています。この工房は、学生もプロも関係なく、クリエイターの脳みそと、手わざで物が生まれる場所。何もないところから物が生まれる尊さを学生が体験すれば、必ずいろんな形で影響を受けて、伝播していく力になる。ウルトラファクトリーの活動というのは、ある意味、大学のエンジン部分となって教育を回していき、京都から日本、そして世界を回していく。そういうエネルギーのるつぼ、クリエイションのるつぼ、みたいなものにしていきたいという思いから始まっています。

他に、ヤノベ流の教育の極意はありますか?

学生や若いクリエイターの才能が開花する瞬間に立ち会えることはとても尊くて、教育現場にいて嬉しいことです。だからこそ、価値観を押し付けるのではなく、開花するためのお手伝いをする感覚です。僕が教えられることは、僕の姿を見て僕の屍を越えて行けってことくらいです。アーティストとして成長し、学ぶためには、死に物狂いで物を生み出そうとする人たちの姿を目にすることが一番。美味しい料理を食べないと一流の料理人になれないのと同じで、経験がモノを言う。そういう存在は近くにいるだけで物凄いオーラを発している。その熱量を知ってほしいんです。

 

ヤノベケンジ《Sun Sister 模型》《Gulliver & Swift-CatDoll 》《ミニ・トらやん》
 

 

PROFILE

Kenji Yanobe
やのべ・けんじ/1965年大阪府生まれ。現代美術作家。幼少期に目撃した大阪万博の跡地「未来の廃墟」を原点に、社会とサヴァイバルをテーマにした大型機械彫刻を制作。代表作として、《ジャイアント・トらやん》《Sun Child》《SHIP'S CAT》がある。

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