ICA京都では、毎年世界各国からアーティストやリサーチャーを特別研究員として受け入れ、その研究活動を支援しています。今回はスペインより来日中の特別研究員、クリスティーナ・ゴメス・レチョン・キロス氏が「小津安二郎によって描かれた日本と、今日の欧米の視点から見た日本における社会文化的差異について」をテーマに本学でトークイベントを行います。

■特別研究員プロフィール
クリスティーナ・ゴメス・レチョン・キロス氏は大学で法律を学び、企業法、事業法における二つの修士課程修了後、企業弁護士として5年にわたり2つの国際法律事務所で勤務してきました。同時に、哲学、文学、そして映画への強い情熱を抱いていた彼女は、幼少時代から映画が大好きで、特に小津安二郎を尊敬していました。博士課程に進む際、職業である弁護士とはまったく異なる専門領域ではありながら、自らの情熱に紐づいた研究を進めようと決意し、弁護士業と両立させながら「映画における哲学」をテーマに研究を始めました。彼女の研究は「小津安二郎の映画に登場する『紀子』に表された女性像」であり、この研究を基盤に海外の様々な大学で滞在研究を進めてきました。

■トークイベント概要　
今回、「小津安二郎によって描かれた日本と、今日の欧米の視点から見た日本における社会文化的差異について」をテーマに、トークイベントを行います。トークの中では小津安二郎の映画を深く理解するための1つの鍵として、現実世界をより理解可能なものにするために物事を「類型化する」傾向がある西洋視聴者の視点について紹介します。この「類型化」は、固定観念的な印象を導き、小津の作品のエッセンスの理解を妨げます。小津の作品は、近代化のために変貌した日本社会の中で縮小した価値観への頌歌です。小津の作品が戦後の日本という特別な時間や場所を舞台としているにもかかわらず、多くの視聴者に理解されるのは、小津の作品が人間そのものを描いているからでしょう。また、小津安二郎が、現代において顕著になっている問題、特に哲学者ジグムント・バウマン氏の言う『リキッド・ライフ―現代における生の諸相』、つまりあらゆるものが速いスピードで変化する西洋社会の現代生活における問題に取り組んでいた先見の明のある人物であったことについても示します。

独自の視点から日本を見つめるクリスティーナ氏のトークイベントへ、ぜひ奮ってご参加ください。