卒業生紹介

京都芸術大学を卒業し、
活躍している先輩を紹介します。
卒業生インタビュー

柳生海斗さん

パナソニック株式会社 プロダクトデザイナー

身のまわりの物すべてが、
誰かによってデザインされている。
自分もその、“誰か”の一人に
なれるかもしれない。

身のまわりの物すべてが、誰かによってデザインされている。自分もその、“誰か”の一人に。

柳生さんは、大学に入る前はどんなことに興味があって、どうしてプロダクトデザインに惹かれていったのでしょうか?

柳生
小さい頃から、何かをつくることが好きでした。自分がつくったもので誰かに喜んでもらえるのがすごく嬉しくて、「将来もものづくりに関わっていたい」という気持ちは小さいころからありました。それと同時に、小学校から高校までシンガポールで生活していたこともあって、いろいろな文化や身のまわりのものに触れる中で、「生活の中のモノ」そのものへの興味も広がっていきました。

ずっとシンガポールに!どんな子ども時代でしたか?

柳生
とにかく、つくることが好きな子どもでした。物心ついた頃から、切り絵で昆虫をつくったりして、おばあちゃんや両親にプレゼントしていました。自分がつくったもので喜んでもらうのが、すごく好きだったんです。

子どもの頃から、誰かのためにものをつくる経験を。

柳生
ものをつくることが何よりも好きでした。

ものづくりが好きで芸術大学に進む人は、「アート」として作品をつくる人と、「デザイン」としてものづくりに向き合う人がいると思うのですが、もともと「デザイン」への興味が強かったのですか?

柳生
いえ、はじめは「アート」への興味のほうが強かったと思います。でも、京都芸術大学のオープンキャンパスでプロダクトデザインコース:風間重之先生のお話を聞いて、まずすごく印象的だったのが、「身のまわりの物すべてが、誰かによってデザインされている」という言葉でした。

すごくいい言葉ですね!

柳生
その言葉を聞いてハッとしました。そして、「自分もその”誰か”の一人になれるかもしれない」と思えたんです。

オープンキャンパスが「デザイン」に興味を持つきっかけになったんですね。

柳生
「ものをつくって生きていきたい」という気持ちがずっとあって、その手段として「デザイナー」という存在が、自分にマッチするかもしれないと感じました。

「家族の誰かのために、ペン立てをつくってください。」

シンガポールに長く住んでいたということは、日本以外でデザインを学ぶという選択肢もあったかなと思うのですが、どうして京都芸術大学へ?

柳生
オープンキャンパスでの先生との出会いが、やはり一番大きかったですね。それから今ふり返ってみると、もともと文房具を集めるのも好きで、消せるペンにしても、シャープペンにしても、日本の文房具文化にはすごい発明がたくさんあると感じていました。

身近な文房具から、それを感じ取っていたんですね。

柳生
文房具だけじゃなくて洗剤のキャップ一つとっても、使う人のために工夫してつくられていて。そういうものをつくっている国だから、「すごい人がいるに違いない」と感じたのを覚えています。

そこから入学まではどんな風に?

柳生
当時はコロナ禍だったこともあり、総合型選抜の体験授業型でもオンラインで入試を受けることができました。プロダクトデザイン学科では「家族の誰かのために、ペン立てをデザインしてください」というお題が出たのを覚えています。

入試のお題も素敵ですね。

柳生
ケント紙やセロテープ、ノリやハサミなどのシンプルな素材と道具だけでつくるのですが、「まず家にいる誰かに話を聞いて、どういうペン立てが欲しいのかを聞いてください」と言われたことが印象に残っています。

いきなりつくるのではなく、話を聞くところから始まるんですね。

柳生
はい、誰かの話を聞いて、その人のためにつくる。そのプロセス自体が新鮮で、「これがデザインなんだ」と感じました。

入試自体が、誰かのためにものをつくるという体験になっているのですね。

どうしたら、この先生たちのようになれるだろうか?

学科選びは、プロダクトデザイン学科一択だったのですか?

柳生
他の学科にもチャレンジして合格もいただいたのですが、悩んだ末に最終的にはプロダクトデザインを選びました。何分の一かの模型ではなく、自分の手に収まる実物をつくり切れるところに惹かれたんです。実際にモノをつくり、自分で確かめ、使ってみて完成度を上げていけるところが自分に合っていると感じました。

実際に入学してからは、どんな風にデザインを学んでいったのですか?

柳生
まず、人生初の一人暮らしで、家族はシンガポールに残って自分一人が帰国したので生活環境が大きく変わりました。

10年以上ぶりに帰国した日本で、いきなり一人暮らし。すごく大きな変化だったでしょうね。

柳生
でも、そういう生活への不安や不満みたいなものを感じさせないくらい、毎日が楽しかったです。一人暮らしを始めるワクワク感もありましたし、学科の教授たちを見て、「この人たち、すごくかっこいいな」と感じたのを覚えています。

かっこいい先生たちが周りにいるって、すごくいいですね。

柳生
憧れを抱いて、「どうしたら、この先生たちのようになれるだろうか?」と考えるようになりました。

先生たちのどんなところに憧れを感じたんですか?

柳生
大手メーカー出身の先生も多くて、それまでにデザインされてきたプロダクトや実績もすごかったのですが、肩書きや実績だけではなく、ものづくりに向き合う考え方そのものがすごく魅力的だったんです。

ものづくりに対する考え方。

柳生
たとえば、Panasonic出身の時岡英互先生が「デザインは、ワクワクする未来を可視化する仕事だ」ということを仰っていて、そういう言葉からすごく刺激を受けました。

既製品の形を忠実に再現しようとしたら、いろいろな工夫と配慮が見えてきた。

授業では、まずどんなことを?

柳生
はじめは、プロダクトをつくるうえで必要なCADや製図などの基礎を一から学びました。授業ではスケッチもあったのですが、それまで好きで描いてきた絵とは全く違って「コミュニケーションの道具」としての絵なんです。

コミュニケーションの道具、というと?

柳生
きれいに描くことよりも、考えていることをいかに伝わりやすく、早く描くか。手を動かすスピードが求められて、そこは苦労しましたね。一方で、CADを覚えたことで、コンピュータ上でいろいろな図案をかんたんに試せるようになって、一気につくれるものの幅が広がりました。

アナログとデジタル、両面から基礎を身につけていったんですね。

柳生
特にCADは楽しくて、先生に自分から質問して、いろいろなものをつくっていました。

いいですね!どんどん自分から。

柳生
「造形模写」という授業も印象に残っていて、世の中にあるプロダクトを一つ選んで、そっくりそのままの形をスチレン材で再現するんです。僕はゲーム機のコントローラーを選んだのですが、形を真似しようと観察しているうちに、使う人への配慮や、プロダクトのどの部分にどんな工夫がされているのか、どんどん見えてきて。

忠実に再現しようとすると、いろんなことに気づけるんですね。

柳生
気付きを紙一枚にびっしりまとめたのを覚えてます。この体験を通して、世の中の製品がどれだけ深く考えられてつくられているのかを実感しました。この体験を通して、世の中にある一つひとつの商品が、どのくらい深く考えてつくられているのかを想像できました。

すごくいい経験になりそうです。

柳生
ある課題では、言葉から受ける印象を、どう形やバランスに置き換えていくかを考えました。感覚的な言葉をそのままにせず、形として成立させる難しさと面白さがありました。

2回チャレンジすることで、自分の成長を実感できた「産学連携授業」。

1年生の頃から、いろんな課題を経験して、プロダクトデザインというものを幅広い視点から学んでいますね。

柳生
2年生になると、3D CADや3D プリンターも使えるようになって、提案できるもののレベルが一段階上がった感覚がありました。それと併行して、前期には「産学連携授業」にも挑戦しました。

企業の方々といっしょに進める授業のことですね?

柳生
3年生が中心なのですが、2年生から参加できる枠があってチャレンジしました。そのときは、「とにかく難しかった」という印象です。

どういうところに難しさを感じましたか?

柳生
その授業では、これからの暮らしや社会を想像しながら提案を考える必要がありました。だからこそ、「それは誰にとっての未来なのか」「その人はどんなことに困っていて、何を求めているのか」を、しっかり調べて考えることが求められました。デザインは「カタチ」だけではないと、痛感しました。

2年生の早い段階で、それにチャレンジしたんですね。

柳生
難しかったからこそ学べることが多いと感じて、「来年もう一度挑戦したい」と思うようになりました。3年生の前期に、改めて産学連携授業に参加しました。その頃になると、自分なりのデザインプロセスが見えてきていて、前回よりも少し成長できたなという手応えを感じることができました。

1年分の成長を実感できたんですね!ちなみに、どんなテーマに取り組んだんですか?

柳生
この大学は就職に向けた準備が早いので、3年生になると自分が目指したい分野を選びます。僕は「家電」への興味が強かったので、SONYさんの授業に参加しました。テーマは、「家事の『楽しい』をデザインする」。

面白そうなテーマです。

柳生
その頃は、まず「自分が欲しいな」「自分だったらワクワクするな」と思えるところから考えるようにしていました。そのうえで、なぜそう思ったのかという実感や体験があると、人にも共感してもらいやすくなると感じていました。

なるほど。

柳生
日ごろの家事をふり返る中で、アイロンをかける動作がバイオリンなどの弦楽器に似ているなと気がついて、家で服のシワを伸ばすときに音楽をかけてみたんです。すると、すごく気持ちが乗って、アイロンがけがはかどって。

面白いなぁ。まずは自分で、家事が楽しくなる瞬間を実体験したんですね。

柳生
それを動画にして発表したら、先生も「すごく良い」と言ってくださって、「楽器を奏でるかのように、音楽を楽しみながら使えるアイロン」を提案しました。

動画まで撮影して、プレゼンの仕方も自分で工夫していますね!

柳生
1回目の挑戦でも手応えはあったのですが、その経験があったからこそ、「次はもっと良い提案ができるはずだ」と思えました。2回目では、アイデアの見つけ方や提案の組み立て方の面で、自分なりの成長を実感できました。

真剣に臨んだインターン。ずっと憧れだった側へ。

柳生さんは今、「Panasonic Design Kyoto」でデザイナーとしての一歩を踏み出しています。家電をデザインしたい人にとって理想的な環境だと思いますが、就職活動については、どんな風に取り組んだのですか?

柳生
3年生が始まる頃には、就職に向けた準備も本格的に動き出していました。特に「夏のインターン」は重要な時期で、2年生の頃から制作していたポートフォリオをブラッシュアップしたり、就活向けの授業で行った自己分析を見直したりして準備を進めました。

やはり家電メーカーを中心に探していたのですか?

柳生
はい。その中で最初に強く惹かれて、インターンに応募したのがPanasonicでした。

最初から意識していた会社だったのですね。

柳生
狭き門だと思っていたのですが、運よくインターンに参加できて。全国から集まった優秀な学生たちを前に、かなり緊張したのを覚えています(笑)

柳生さんもきっと、周りの学生さんから優秀な人だと見られていたのでは(笑)

柳生
数日かけて準備したプレゼンの場では、緊張から一時的に耳が聞こえづらくなるほどでした。

そのぐらい真剣に、大きなプレッシャーと闘いながら臨んでいたんですね。

柳生
でも、自分が提案に込めた想いが伝わったのか、次のインターンにも参加させてもらえることになって。現役のデザイナーの方々と接する中で、「ここで働きたい」という気持ちが、さらに強くなっていきました。

内定の連絡を受けたときは、どんな気持ちでしたか?

柳生
結果を待つ間は、朝も夜もそのことばかり気になって、ずっとソワソワしていました。連絡をもらえた瞬間は、本当にうれしくて。その翌日、すごくほっとした気持ちで一日を迎えることができて、「ずっと憧れだった側に自分がなれるんだな」という気持ちがふつふつと湧いてきました。

最高ですね。

誰かの憧れになるようなプロダクトをつくっていきたい。

2025年の春入社されて、このインタビューの時点では入社から7ヵ月ほどですね。デザイナーとしてどんな風に一歩を踏み出しているんですか?

柳生
つい最近、半年ほどの研修期間を終えて、デザインセンターに本配属されたところです。実際にものがつくられる工場では、製造ラインに立ってみて、製品の使いやすさだけでなく、「つくりやすさ」もデザインに求められるのだと肌で感じました。ものが販売される家電量販店や街の電気屋さんでは、自分たちがつくる家電が、どんな方々の元に、どんな風に行き渡っていくのか、ゼロ距離で見ることができ、すごく良い経験になりました。

これからのデザインに、活きてきそうな経験です。

柳生
そして今は、調理にかかわる家電やキッチン用品のデザインを担当しています。

既存製品の改良だけでなく、新しい製品のデザインも?

柳生
はい。既存製品の改良だけでなく、新しい価値につながる提案を考える機会もあります。日々の仕事の中でもそうしたチャンスはあるのですが、年に1回、社内向けに提案を発表する大きな場があります。いろいろな事業部のリーダーたちも一堂に集まる社内のビッグイベントになっていて、クリエイティブにいろいろな提案にチャレンジすることができるんです。

すごく面白そうですね!

柳生
調理家電チームでは、単に製品をつくるのではなく「食の体験をつくる」という意識があります。日常の食事の中でも気づきを大切にしたり、食に関するイベントに足を運んだりしながら、インプットを重ねています。

プロダクトの先にある体験まで考えているんですね。

柳生
Panasonic全体でも「くらし」という言葉を大切にしていて、より良いくらしを提案するために、日々アイデアを出し合っています。

これから、どんなデザイナーになっていきたいですか?

柳生
誰かにとっての憧れになるプロダクトをつくりたいです。そして、「やっぱりPanasonicっていいな」と、家電の魅力を感じてもらえるきっかけになれたらうれしいですね。

とにかく、楽しんだもの勝ち。楽しみながら重ねた経験が、自分の身になっている。

今日はいろいろとふり返りながらお話を聞かせてもらいました。改めて、京都芸術大学の魅力はどんなところにあると思いますか?

柳生
この大学に入って本当に良かったと思っています。先生方が素晴らしい人たちばかりだし、ものを考えて形にするための環境も充実している。何かやりたいことがある人にとっては、これ以上ない場所だと感じています。

柳生さん自身も、その環境を最大限に活かしていますよね。

柳生
とにかく「楽しんだもの勝ち」だと思っていて。この大学は、いろいろな物事との出会いを楽しませてくれる場所でもあって、気づいたらその経験が自分の身になっている。

いいですね。

柳生
これから入学される高校生のみなさんにも、ぜひ思いきり楽しみながら、いろいろなことを経験してもらえたらうれしいです。

今日は貴重なお話を、ありがとうございました!

 

 

卒業年度・学科
2025年
プロダクトデザイン学科 卒業
出身高校
カナディアン・インターナショナル・スクール
プロフィール
高校までシンガポールで暮らし、オンライン形式の入試を経て入学。在学中から産学連携授業や交換留学に積極的に挑み、卒業制作では学長賞を受賞。「Panasonic Design Kyoto」にて、プロダクトデザイナーとしての一歩を踏み出す。

作品

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卒業研究制作作品|不安定な均衡状態に身体が同調する感覚に着目し、物体の状態変化を光の濃淡として表す新たな感覚的インターフェースの制作的研究。

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