学長・研究科長メッセージ

学長メッセージ

この世界を、もっとしなやかに

この世界は、もっとしなやかになれるのではないでしょうか。
人生は一本道を進むだけではなく、さまざまな可能性が広がっています。芸術も、唯一の道しかないわけではなく、その道筋そのものを新しく作り変えていくことができます。そして芸術の面白さとは、現実と向きあいながらも、それに衝突することなく、また折れることなく、しなやかに対応し、まだ実現していない世界を作り出すところにあるのではないでしょうか。

本学大学院では、芸術の既存のありかたを問い直し、今日の社会のなかに創造性をどのように活かすことができるかを探究しています。このこわばった世界に、大学院生たちがみずからの研究と制作を通じて一石を投じ、それが起こしたさざなみを地上のいたるところに行き渡らせる。それがこの大学院の使命です。

もちろん困難な仕事です。しかしまたそれは刺激的であり、ワクワクする仕事です。本学の大学院には、世界中から創造と研究を楽しんでいる学生が集まっています。入学されるみなさんには、ここで出会った仲間とともに、柔らかな思考によって、果敢に新しい価値を生み出し、この世界にしなやかな弾みをもたらすことを願っています。

学長 佐藤 卓
学長 佐藤 卓 SATOH Taku

1979年東京藝術大学デザイン科卒業、81年同大学院修了。株式会社電通を経て、84年独立。株式会社TSDO代表。商品パッケージやポスターなどのグラフィックデザインの他、施設のサインや商品のブランディング、企業のCIなどを中心に活動。代表作に「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」パッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」グラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」シンボルマークなど。また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」「デザインあneo」総合指導、21_21 DESIGN SIGHT館長を務め、展覧会も多数企画・開催。著書に『塑する思考』(新潮社)、『マークの本』(紀伊國屋書店)、『Just Enough Design』(Chronicle Books)など。毎日デザイン賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章他受賞。

研究科長メッセージ

より生きやすい世界をつくる

芸術の多指向性

先端、尖端、突端と、ひたすら走る芸術家。追いつき追い越せ、抜け駆けせよと焦る進歩主義者たち。あたかも、みんなで一直線に竿の先を目指しているかのように。しかし、まっすぐ一直線にのびきった棒は、金太郎飴のようなもので、どこで切っても似たようなものかもしれません。実のところ、先端はたくさんあって、星々のきらめきのように、いろんな方向に突出しているのではないでしょうか。金太郎飴の先端より金平糖の尖端です。破砕する星のかけらのように、それぞれの方向へと無数に走る末端がそのまま先端です。

社会を動かす知恵と技

日本における芸術の高等教育機関は、ここ150年ほどのあいだ、いくつかの限られたジャンルで美術や音楽の専門家を育ててきました。そして歴史に残る世界的な大家たちも(いくらか)輩出してきました。しかし今や芸術や芸術をとりまく社会の変化は著しく、芸術の専門家に期待されるものも大きく変わってきています。そもそも芸術とは、本来、社会から隔絶した特殊な職域ではなく、様々な局面で創発的に発揮される知恵と技のことです。芸術を研究する者にとって、解決すべき領域は実に広大です。

枠組みを作り変える大学院

本大学院芸術研究科では、「芸術専攻」と「芸術環境専攻」の両専攻の中に、美術、デザイン、文化財科学、文化研究、芸術教育など実に多様な専門分野がひしめき合っています。それぞれ弾力性のある実践的な研究制作指導によって、清新な価値創出に取り組む研究機関です。決まりきった型にはまる方法論に甘んじることなく、方法そのものを組み立てる構想力を持ち、社会的要請に応えつつ、社会に新たな価値観を提示しようという意欲のある方は、是非本大学院に集まってください。芸術の力で、新しい社会のかたちをつくりましょう。

京都芸術大学大学院 芸術研究科長 上村 博 UEMURA Hiroshi

京都大学大学院文学研究科博士課程中退。京都大学文学部哲学科助手、パリ第四大学研究員を経て、1995年より本学に勤務。2019年4月より現職。芸術の理論的研究、特に芸術による場所と記憶の形成作用について研究。主な論文に"Art in situ or the site as art:A Japanese reception of contemporary art" in Ch.Vial-Kayser, S. Coëllier (ed.),Installation art as experience of self, in space and time,Vernon Press, 2022.共編著に『芸術環境を育てるために』(角川学芸出版、2010年)、『アートを書く、文化を編む』(京都芸術大学・東北芸術工科大学出版局藝術学舎、2019年)など。

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