社会人にも開かれた
コンテンポラリーアートの最前線

超域制作学プログラム

超域制作学プログラムには2つのラボがあります。現代の社会的・技術的情況を踏まえてアートプロデュースを行うために研究基盤を作る後藤・水田ラボ。信州安曇野を研究実践の場所として現地でのアートプロジェクトを実践的に学ぶ保科・大橋ラボ。いずれも東京・外苑キャンパスをベースとするゼミ指導により、社会と接する芸術の最前線を学ぶ実践的な研究分野です。

分野

アートプロデュース(後藤・水田ラボ)、アートプロジェクト(保科・大橋ラボ)

特長

対面学習(東京・外苑キャンパス)
+オンライン学習

アートプロデュース(後藤・水田ラボ)
の特長

  • コンテンポラリーアートの最前線を動かす、グローバルな人材を育成する。

    21世紀に入ってから、芸術を巡る情況はますます活発に、また複雑になってきています。そのなかにあって、今後どのような芸術活動が切り拓けるのか、国際的な視野のひろがりを持って提案できる人材が求められています。このラボは単に、現代アートの研究者、専門家を育成することを目的にしていません。むしろコンテンポラリーアートの最前線の現場、例えば、美術館、ギャラリー、アートブックストア、アートイベントなどの現場、さらにはビジネスの現場で活動できる、即戦力となるプロフェッショナルを育成するためのプログラムを提供します。

    後藤繁雄ラボ特別講義レポート

    2017年10月に実施した後藤繁雄ラボ特別講義の様子を、本学のwebマガジンでレポートしています。

    後藤繁雄ラボ特別講義-コンテンポラリーアートを学ぶ者の心得
特長
  • 深さのある現代作家研究、キュレーション研究

    激しく流動するコンテンポラリーアートシーンをつかむには、事態のストラクチャーだけではなく、そこでトピックとして浮かび上がっているキーとなるアーティストの「深度のある研究」論文が不可欠となります。丁寧な個別指導を行うことで、スペシャリストとしての確信を身につけてもらいます。

    研究対象の例

    修了研究では、例えば以下のような作家をとりあげて論じることになります。この他の個人・団体を扱うことももちろん可能です。

    • オラファー・エリアソン
    • ピエール・ユイグ
    • 杉本博司
    • ヴォルフガング・ティルマンス
    • ウォリード・ベシュティ
    • トマス・ルフ
    • アピチャポン・ウィーラセタクン
    • 名和晃平
    • マルレーネ・デュマス
    • 草間彌生
  • 年8日間のゼミ指導とプロジェクト

    思考は議論によって鍛えられます。対面授業においては、スライドなども多用し、最先端のアーティストの発想や政策、ストラテジーを深く理解することが必要です。また、互いに学び合うOBを含むゼミ生間の、オンラインでの勉強会も盛んです。ラボとしての『プロジェクト』にも参加することで、実践力を高められます。

対面学習(東京・外苑キャパスおよび長野県安曇野市)+オンライン学習

アートプロジェクト(保科・大橋ラボ)
の特長

  • 超越したアートの感触を生み出す。

    今日、現代芸術作品のありかたは、アトリエ内での個人制作にとどまりません。前世紀後半から、芸術のモダニズムを乗り越えるために、広く社会環境や自然環境との関係性の中で、場所の意味や地域の特性を踏まえた芸術実践が試みられてきました。自然に息づく生命体、風土のもたらす民俗学的造形、共同体における産業文化の記憶などは、今日的な表現課題でもあり、古いものの中にこそ、新しい芸術の手法が隠れています。そして本ラボの芸術実践でも、そのコンテンツは絵画や彫刻などの領域にとどまりません。社会、物質、空間、自然環境、科学、時間、民俗学なども作品制作の媒体として扱い、これらの媒体を相互に関係させ、日常生活に身体が触れた時に起こる感覚や感触を作品化します。そのことを通じて、人間と環境との関わりを、芸術制作という手段によって探究し、地域の現実を明確なコンセプトと的確な技術によってアートに昇華することのできる人材や、さらに地域の芸術、文化をプロデュースできる人材を育成します。

特長
  • 複合演習

    地域やメディアなど、様々なアート媒体を複合させて生まれる感触を味わいます。このアートプロジェクトは、芸術の領域を超えて思考し実践していきます。芸術実践でのコンテンツは、社会、物質、空間、自然環境、科学、時間など、日常生活において自分の身体が触れる時に起こる感覚、感触です。それをもう一度、素材やメデイアによる演習を通じ、芸術作品として再構築します。これが作品制作の技術となります。

  • 各地でのアートプロジェクトの比較検証

    担当教員自身の活動例も含め、さまざまな地域芸術を超えた領域で実践されているプロジェクトや芸術祭、民族学探訪での事例を紹介しつつ、その制作過程や受容の実態を検証。事例に関する研究発表やディスカッションの成果を、ラボ生各自の研究に反映させます。

  • 修士研究制作(フィールドワーク)

    フィールドワークでは、最終的に、特定の地域や場所との関係性によって、自己表現としてのインスタレーションワークを構想します。そのことを通じ、自分の置かれた環境で、どのような作品制作が可能なのかを自ら探究できる能力を身につけます。

教員メッセージ

アートプロデュース(後藤・水田ラボ)

冷戦体制が崩壊し、経済や政治のグローバリゼーションが本格化した2000年以降、コンテンポラリーアートも急激な変化の波にのみ込まれました。例えば、ヴィジョナリーとも言うべき、キュレーションの巨人ハラルド・ゼーマンが、2001年に49回のヴェニスビエンナーレで引き金を引き、2003年50回目のヴェニスでは、フランチェスコ・ボナミのもと、複数のキュレーターたちが「Dreams and Conflicts」のテーマのもと「流動的な世界」についての再編に挑戦するという出来事がありました。ハンス=ウルリッヒ・オブリストやダニエル・バーンバウム、マッシミリアノ・ジオーニなどの辣腕キュレーターたちが、グローバルなアートシーンをコンダクトし始めたのです。

このような動きに伴って、アートヒストリーやアーティストのポジショニングも変化しました。従来のモダンマスターズだけを研究するやり方では、到底ついてゆけない事態に突入したのです。美術大学の多くは、グローバルに変化し続ける「アートシーンの動向」に対応しきれていないと、私は考えます。ビエンナーレなどの国際的な展覧会は、不安定な社会状況の中で、コンテンポラリーアートを通して、かつてないほどのラディカルな姿勢で展覧会を組織してきます。また、それと並走して、雑誌やアートブック、クリティック、キュレーションなどの情報も、リアルタイムに流通しています。しかし、それに対応できる人材育成は、全く遅れをとっていると言ってよい状況です。

また、アートフェアだけではなく、コンテンポラリーアートの力が、ファッションブランドをはじめとする、「プロダクツ」に価値を与える上で、きわめて有効であることは、ますます重要になっています。このことは単に「アートビジネス」に対応できる能力というだけでなく、批評やキュレーションの能力にも不可欠なものだと思われます。

この「アートプロデュースラボ」は、私がこの19年間考え、実践してきたヴィジョン一知識とノウハウ、そして、ネットワークを総動員して、「これから必要なスキル:知識、戦略力」を持った人材を育成したいと考え、スター卜するものです。現在計画中の「さまざまなアートプロジェクト」や「アートブックショップ」などでの勤務も射程に置きながら、共に学んでいきたいと考えています。

コンテンポラリーアートの研究、フィールドワーク、アートブックの編集や批評などを行うだけでなく、ギャラリーの運営、アワードの実施など、様々な実践を積極的に行なってきた。これらの作業を通して、新たなアートのヴィジョン、人材育成などを開発してきた。

コンテンポラリーアートをめぐる仕事は、国内にとどまらず、グローバルな知見や行動力が求められている。ヨーロッパや中国での、キュレーションやアートフェアの経験やネットワークを活用し、受講者にもそのような場を共有したい。写真は、中国でのアワード審査員の時のもの。

後藤 繁雄

大阪生まれ。編集者、クリエイティブディレクター、アートプロデューサーとして活動。YMO、坂本龍一らのアートブックや伊勢丹、GINZA SIXなどの企業キャンペーンのディレクションを手がけるとともに、篠山紀信や蜷川実花らの大型美術館巡回展を成功させる。「篠山紀信展 写真力」は、全国33の美術館で開催され、入場者数は100万人を突破。一方で、若手現代アート作家の発掘・育成・戦略的プロデュースを使命としており、全国の美術大学の卒展から優秀な才能を選抜する登竜門a.a.t.m.(アートアワードトーキョー)では15年にわたり500人以上のアーティストを輩出。自身が運営するG/P galleryにおいても、海外のアートフェアにフォトアーティストを次々と送り出し、国際的に高い評価を勝ち得ている。

アートプロジェクト(保科・大橋ラボ)

超越したアートの感覚を生み出すために。
現代において美術の分野は、急激な勢いでその領域を拡大させています。アートプロジェクトは、この芸術の領域を超えて思考し実践していきます。芸術実践でのコンテンツは、社会や物質、空間、自然環境、科学、時間などの日常生活に、自分の身体が触れる時に起こる感覚、感触をもう一度、芸術作品として再構築することです。
芸術作品を創るための制作媒体は、近現代の美術において、画材や空間や物質に頼っていました。しかし現代では、技術革新によって、科学や情報領域が日常生活に関わっています。ここが現実なのか、仮想現実なのか、その境目は見えにくくなっています。芸術の実践は、この境界線上に身を置いて、確かな実存を芸術作品として照射投影するものです。この保科ラボでは、媒体の制約は問いません。絵画、立体、空間、時間、写真、映像、音、自然環境、社会環境、科学、物理学や情報やテクノロジーのコンテンツ、生命体、自然の物質、民俗学、芸術を超えた領域コンテンツ。これらの媒体を自分の身体と関係させて現実の中に再構築させ、アートインスタレーションとして投射します。
アートプロジェクト作品を制作することは、現代美術の独創的で普遍的な感覚、感触を芸術表現に結晶化することです。それは、自分を知ることと、他者性の世界を知ることとの、境界線上に立つことでもあります。自然な感覚に近いところに作品はあり、最終的には自分に素直な感覚の作品を、自由に表現できることをめざします。

保科 豊巳

1953年長野生まれで東京と長野を拠点に活動。日本もの派、榎倉康二、高山登の影響の中、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。同期生に川俣正がいる。ポストもの派世代に属し、木、紙、墨、映像等の素材を用いたインスタレーションや絵画作品制作を展開してきた。日本をはじめスイス、台湾、ドイツ、アメリカ、中国、などで作品発表を精力的に続けている。2002年に文部科学省在外研究員として渡米。2006年から東京藝術大学美術学部教授、美術学部長、理事・副学長を歴任。2020年東京藝術大学名誉教授。

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