博士課程に進む意味

なぜ博士課程に進むのか

新たな挑戦の3年間

博士課程へ進学をする人は、多くの場合、自分自身で新たな道をきりひらくことができる力をもっています。にもかかわらず、博士課程に進学するのはなぜなのでしょうか。
ここには、3年間という時間を使って新たな挑戦をする機会と、その挑戦意欲を育てる環境があるからでしょう。実際、本学の博士課程は、これまで誰も踏み込んだことのない、新しいテーマを追求し、そして成果を世に問うてきた人を多く輩出しています。
博士課程の学生に接する教員たちは指導者であると同時に、現役の研究者や制作者として、新しいものを生み出すという目標をもち続けています。この点からすると、学生と教員は同じ立場にあるわけです。教員は学生一人ひとりと向き合い、意見を交わし、新しいものをつくりあげていこうとしている学生の良きアドバイザー、という姿勢をもっています。
また、本学の附属機関である大学院学術研究センターでは、実践的なプロジェクトやワークショップが数多く展開されています。実践のための研究が行われ、その活動に参加することで、自分の研究成果を社会に還元させる方法を考える機会を得ることができます。このことは現代社会において、研究者にとっても、制作者にとっても重要なことです。

「語る」「書く」ことができる制作者

現代は作品はそれ自体が全てを語るものなのだから、制作者が自分の作品について「語る」「書く」必要はないという時代ではありません。他者が理解・共感できるように、自分の作品について語り、書くことができなければ、アーティストとしてのスタートラインにさえ立てない、という状況が世界標準となりつつあります。
本学博士課程は、作品制作に取り組む人にも、日本語での論文提出を課しています。制作に取り組んできた人にとって、テーマに沿って調査・研究を進め、大部の論文にまとめ上げることは大変な仕事です。しかし、論文を書き進めることで、作品の質が向上した例を数多く見てきました。論文の内容についても、制作者ならではの視点から、非常に独自性の高いものが提示されています。
論文執筆と作品制作を併せて行うことで、非常に良い相乗効果が生まれることを、本学で博士課程を過ごした人たちが証明してくれています。ここに、博士課程に在籍しながら制作をすることの大きな意味があると思うのです。

制作現場が身近にあることと、研究者への道

主として学術的な研究を行い、博士論文の提出のみによって学位を取得しようとする、いわゆる研究者への道を歩んでいる人にとって、アーティストが身近にいて、その発想や制作の仕方、感覚的に身につけているものにふれられることは、研究の助けとなるはずです。
最先端の作品が、実は伝統に則って制作されている場合もあるでしょうし、一見伝統的な手法で制作されたように見える作品に、実際には最新の機材や材料などが駆使されていることもあるでしょう。現代を生きるアーティストが、どのように作品を生み出していくのかを間近に見ることによって、自身の研究を進めるための示唆を得ることは大いにあります。これは本学の博士課程で学術研究をすることの特長のひとつです。
ぜひ、いろいろな人の研究や制作活動に興味を持ち、積極的な交流や対話を行ってほしいと思います。

博士課程は3年間です。3年後には、ある一定の成果を、博士論文や修了制作というかたちで提示する必要があります。
一方で、これらの成果は一生かけて取り組んでいくべきテーマの、スタートラインともなるはずです。
そんな気持ちで、3年間挑戦し続けてください。

博士課程 芸術専攻 専攻長 河上眞理

博士課程 芸術専攻 専攻長

河上 眞理

早稲田大学大学院博士課程在学中、N.Y.S.R.グッゲンハイム財団奨学金によりP.グッゲンハイム美術館で研修を受ける。1995年度イタリア政府奨学金留学生としてヴェネツィア・カ・フォスカリ大学文学部美術史学科に留学、翌年博士課程に入学、2001年Ph.Dを取得。在イタリア日本国大使館外務省専門調査員の職を得て日伊交流事業にも従事。2019年より現職。単書に『工部美術学校の研究—イタリア王国美術外交と日本—』(中央公論美術出版、2011年)。近刊書に『辰野金吾 美術は建築に応用されざるべからず』(ミネルヴァ書房、2015年)。

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