本領域では、世界で活躍できるアーティストやプロフェッショナルの輩出を目指しています。そのために、必要な専門的スキルを高めるとともに、自己の作品や立ち位置を客観的に見つめる視点や、作品を言語化し伝える力を実践的に養います。
選抜された、異なるメディアを扱うアーティストたちがひしめき合う国際的な環境で、違いを豊かさと捉え、多様な人々とつながりながら、新たな表現を生み出す力を育み、コミュニケーション能力とプレゼンテーション能力を育成します。
分野
油画、日本画、版画、写真・映像、彫刻・立体造形、陶芸、染織テキスタイル、パフォーマンス、アート&キュレトリアル・プラクティス(Art & Curatorial Practices)
- アート&キュレトリアル・プラクティス(Art & Curatorial Practices)分野は、英語による指導や授業を受けることがあります
- アート&キュレトリアル・プラクティス(Art & Curatorial Practices)分野は、英語による修士論文も可能です
特長
対面学習
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主体的に学び、ユニークな表現者・研究者へ
一線の美術関係者によるマンツーマンのゼミ授業に加え、領域を越えた合同ゼミやプロジェクト授業が充実しています。
自らのスキルを磨く機会が溢れるほど存在する中から、個々のニーズに合わせて授業を主体的に設計し、異なる領域の人々とのコラボレーションを重ねながら、表現や研究の幅を広げ、ユニークな表現者や研究者として成長するとともに、修了後のキャリアを支える人脈を築いていきます。
ARTISTS' FAIR KYOTOをはじめ、学外での展覧会やインターンシップ、アート業界のプロフェッショナルを招いた講評会など、活気ある現場で入学時から実践経験を積み、アーティストとしてのキャリアを築く機会も豊富に用意されています。 -
制作に没頭できる、充実した施設と個人アトリエ
ウルトラファクトリーでは、金属加工、樹脂成形、木材加工、シルクスクリーン、デジタルファブリケーションなど、多様な素材と技術を活用し、自由な発想をかたちにすることができます。
加えて、陶芸工房、版画工房、染織工房、プリントルーム、フォトラボといった専門分野に特化した制作支援施設も充実しています。
各工房には、専門知識と技術を備えた技官が常駐し、制作過程で必要なサポートや技術指導を受けることが可能です。
さらに、学生一人ひとりに制作用のアトリエが与えられ、自主的な制作活動を日常的に展開できる環境が整っています。
これらの施設を主体的に活用することで、実践的なスキルを身につけ、自らの表現の幅を最大限に広げることができます。
CAPS
CAPS
CAPSは、京都芸術大学大学院 芸術専攻 芸術実践領域(CAP:Contemporary Art Practice、旧・美術工芸領域)を中心に、あらゆる方向へ動的に広がる活動の総称です。
芸術教育を社会における生きた実験と捉え、展覧会の企画・制作・プロデュースなど、正規教育の枠を超えた多様な創造的活動を展開しています。
在校生、修了生、教員がアーティストとして対等な関係を築きながら、互いに刺激し合い、活動を推進しています。活動を通じて築かれたつながりは、修了後もプロフェッショナルな現場へと広がり、さらなる創造の機会へとつながっていきます。
2025年には改修工事を経て、NC棟最上階の1フロアすべてが芸術実践領域の専用アトリエとしてオープンし、このスタジオが「CAPS」と名付けられました。
名称の「S」には、複数の取り組みを象徴すると同時に、自由な実験の場としての「スタジオ(studio)」という意味も込められています。
空間構成と設計の意図
CAPSの空間設計は、開かれた創造環境を徹底的に意識して構築されています。
かつては窓が塞がれ、閉鎖的だったスタジオ空間を、今回のリノベーションでは大きく開放し、京都の四季を望む眺望性の高いワークルームと東西を貫くホールウェイを中心に再構成しました。北側のテラスと一体となった設計により、自然光や風が行き交い、制作に心地よく集中できる環境が整えられています。
空間は個々の制作エリアを確保しつつ、それぞれが互いの存在を感じながら制作に取り組めるように配慮しています。制作モードと展示モードを切り替える照明計画も導入されており、アトリエとしてだけでなく、インスタレーション展示やパフォーマンス、プレゼンテーションの場としても活用できます。
また、スタジオを貫く東西のホールウェイは、ただの通路ではなく、常時作品展示が可能な「回廊」であり、その空間での制作も可能です。このような「移動しながら考える」「滞在しながら創造する」環境づくりが、CAPSの特徴です。
ディレクターメッセージ
創造の現場から未来へ
空間は芸術を志向し、実践するための装置である。
CAPSの設計には、Sandwichを主宰する私自身が国内外で制作・滞在した経験が反映されています。京都という文化的な文脈と、グローバルな芸術拠点の特性を融合させ、ここを単なる「大学の一部」ではなく、芸術表現の発電所=創造のエンジンとしたいと考えました。
院生の皆さんには、時間と空間の密度を最大限に活用し、技術や表現力だけでなく、世界と向き合うまなざしと姿勢をこの場所で培ってほしいと願っています。
また、CAPSは大学院の短い時期を過ごすためだけの場ではなく、卒業生や新入生、そして今でも現役で活躍する教員たちが自由に協働するプラットフォームでもあり、ここからユニークなプログラムが世界に向けて発信され続けるスタジオになって欲しいと思います。
そのため、CAPSに訪れ、CAPSに関わる人々の記憶に残るように独自のステンシルフォントを配置したロゴマークをデザインし、入り口の壁面と扉に配置しました。
CAPSが皆さんにとって、思考と感性を更新し続ける「場所=スタジオ」であり続けることを願ってやみません。

1975年大阪生まれ。1998年、京都市立芸術大学美術科彫刻専攻卒業。同年、英国王立芸術大学院へ交換留学。2003年、京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。独自の「PixCell」という概念を機軸に、多様な表現を展開。2009年、京都・伏見区に創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」を立ち上げる。2011年、東京都現代美術館にて個展「名和晃平―シンセシス」を開催。2013年にはキュレーターの長谷川祐子氏と建築家の妹島和世氏による「犬島『家プロジェクト』」や「あいちトリエンナーレ2013」に参加する他、NYのチェルシーにあるCOMME des GARCONSの店舗内に作品を設置するなど、国内外で精力的に活動する。六本木クロッシング2007 特別賞、第14回アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ2010 最優秀賞ほか、受賞歴多数。
修士1年中間発表展のゲスト講師による講評会風景
WAITING ROOMにて教員と修了生の企画展「大鬼の住む島」集合写真
修士2年作品展での講評風景
2025年度開講授業
思想と(しての)芸術 芸術特論1 【浅田 彰】
思想(とくに美学)の歴史と芸術(アート&デザイン)の歴史を概括し、比較論(比較文明・比較文化・比較思想・比較芸術)的な視点も導入しながら、現代思想と現代芸術の切り結ぶ場面にまで説き及びます。第一の目的は、個々のジャンルを超えた一般論をすべての学生が前提として身につけることです。
芸術と知覚 芸術特論2 【藤本 由紀夫, ニシジマ・アツシ】
芸術作品と人間の感覚や知覚の関係性について、様々な視点から考察します。 視覚や聴覚の芸術だけでなく、多種多様な表現を取り上げ、それらがどのようにして感覚や感情を刺激し、私たちの認識や思考に作用するのかを考察します。 また、自身が獲得した様々な情報(知識、体験等)を創造的に活用できるようになるためにアナロジー(類推的思考)についても学習します。
近現代日本美術史とジェンダー 芸術特論3 【吉良 智子】
現代アートの世界で制作や批評を続けるためには、ジェンダーやセクシュアリティの知識はもはや必須となっています。まず基礎的知識からスタートし、表現とジェンダーやセクシュアリティにかかわる理論的論文の解説、近現代日本美術をジェンダーやセクシュアリティの視点から分析した論文の講読を行います。
イメージの話法 芸術特論4 【川瀬 慈】
ビル・ニコルスが提唱したドキュメンタリー映像の様式の類型(解説、観察、参加、省察、パフォーマティブ、詩)に関する理論を批判的に検討し、人類学やアートにおける様々な映像記録・表現を分析する。動画、写真、サウンド、制作者の声や身体のパフォーマンス等を用いる“イメージの話法”における各種の技法やその効果について比較検討する。
美術工芸品の保存と修復 芸術特論5 【増渕 麻里耶, 大林 賢太郎, 岡田 文男】
正倉院宝物や近現代の美術工芸品の保存と修復について、実際の事例をもとに、その分野を支える理論や理念、現状の課題などについて理解を深める。
禅宗寺院と喫茶文化
ー中世から近世への展開
芸術特論6 【木村 栄美, 小川 後楽, 仲 隆裕】
日常茶飯事ということばがあるように、日本において喫茶は欠かせないものとなっており、文化としても多様である。その歴史を振り返ると日本の喫茶文化は、密教、禅宗等を通して中国の影響を受容し展開していった。中でも禅宗は喫茶に大きな影響を及ぼしたばかりでなく、茶礼の儀礼的な要素と嗜好品としての喫茶が融合して茶の湯へと展開し、喫茶独自の茶室に道具等を設え、庭によって俗世とは切り離された空間を作り上げ、総合芸術として現代まで受け継がれている。また、中国文人への憧憬から文人茶として煎茶が確立し、茶の湯と共に日本喫茶文化史の中で欠かすことのできない伝統文化である。本講義では、喫茶文化展開に大きな関わりを持つ中世禅宗寺院とその庭園から、茶の湯、そして煎茶へと広がりを見せ、喫茶が文化として大きく展開するその過程についてを講義、見学を通して概観し、総合的な観点からそれぞれの専門分野との関わりを考究する。
「個人取材入門」としての調査・
インタビュー・ライティングの方法論
芸術特論7 【木村 俊介】
人に話を聞いてものを書く。展覧会・芸術・工芸・書籍など人のつくったものを受けとめて自前の考えを記す。今やアーティストやキュレーターにも、作品制作や企画づくりのうえで深められたほうがより面白いことを実現できるであろう「言葉での聞き込み、作品・展示の素材づくりをはじめとするライティング」の内実を、実例と方法を見せることで丁寧に伝えていく。そのために、本講座は「個人取材入門 声・記憶・アーカイブ」と題し、[一:情報・道具・固有名詞/二:仕事・民間・クラッシュ/三:声・記憶・アーカイブ/四:傷・楽しみ・静かな世界]という四章立ての構成から、取材の技術を道具として使い込めるような授業を展開してゆく。
キュレーション実践の諸相 芸術特論8 【竹内 万里子, 堤 拓也, 中井 康之】
キュレーション/キュレトリアルといえど、千差万別の実践があることはすでに知られています。アート自体が大きな言葉で定義できないように、もはやキュレーションもスペシフィックな文脈の中で語ることでしかその特異性を抽出できません。本講義では、公的インスティチューションから、芸術祭、アートフェア、中間組織、アソシエーション、個人(アーティスト等)など、さまざまな空間性とその資金性(公金、補助金、助成金、私金など)を操りながら、広くキュレーティング行為を現実社会に実装させているプロフェッショナルを招聘し、それぞれの活動紹介を通じて美学的(エステティック)な経験のみならず運営的(オペレーション)な範囲まで幅広く学びます。
日本の美 再考 芸術特論9 【福本 繁樹】
工芸・民族芸術・伝統・染織など、毎回テーマを設定し、そのテーマをもとに各種視点から「日本の美」について検証。実地体験と、制作や実体験に基づく論理を重視した解説と、パワーポイントで視覚的な資料を豊富に提示した授業形態をとる。
美術館の発展と展覧会史 芸術特論10 【片岡 真実】
美術を取り巻くエコロジーが、美術館、芸術祭、アートフェアなどに拡大し、その制度がグローバルに浸透するなかで、美術史の形成と併走してきた美術館の発展と展覧会の歴史についての基本的な知識を学ぶことで、21世紀に求められるキュレーションの在り方を議論します。
動画もチェック
教員メッセージ
自分の可能性を信じる人へ

もっと制作したい、もっと研究したい、もっと発表のチャンスが欲しい、もっとネットワークを広げたい……。あなたの「もっと」を叶える理想的な学びの場が、私たちの芸術実践領域にあります。
修了後に必要なスキルとネットワークを貪欲に吸収するべく院生同士の切磋琢磨は熾烈ですが、同時にここから新たなアートコミュニティを築いていく意識が彼らにはあります。あなたの作品や研究が、より早く、より遠くへ飛び立ち、そして長く続けられるように、私たちとともに人生で最も充実した2年間を過ごしませんか。
アーティスト。東北大学農学部応用生物化学科生命工学専攻卒業、ロンドン芸術大学キャンバウェルカレッジ写真学科卒業、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了、同博士後期課程修了。 近年の主な展覧会に「I’M SO HAPPY YOU ARE HERE JAPANESE WOMEN PHOTOGRAPHERS FROM THE 1950S TO NOW」(アルル国際写真祭、2024)、「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」(東京都写真美術館、2022)、「第12回恵比寿映像祭 時間を創造する」(東京都写真美術館 2020)「ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」(21_21 DESIGN SIGHT 2018)など。その他アートフェアなど国内外で出展多数。
教員一覧
担当教員(2025年度)
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領域長 多和田 有希 准教授 写真、現代美術
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専攻長 竹内 万里子 教授 写真史、批評、キュレーション
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CAPS ディレクター 名和 晃平 教授 彫刻
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鬼頭 健吾 教授 現代美術
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浅田 彰 教授 批評、思想史、現代思想
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池田 光弘 准教授 絵画
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居原田 遥 専任講師 芸術実践研究、アジア文化研究
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岩泉 慧 専任講師 絵画、絵画技法材料、色彩研究
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大庭 大介 准教授 絵画
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神谷 徹 教授 絵画
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河野 愛 専任講師 現代美術、テキスタイル
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後藤 雅樹 専任講師 金属彫刻、立体造形、鋳金
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酒井 稚恵 専任講師 テキスタイル
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清水 博文 教授 洋画、版画
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菅原 健彦 教授 日本画
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髙橋 耕平 准教授 現代美術、映像、写真、パフォーマンス
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椿 昇 教授 現代美術
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中野 仁詞 准教授 現代美術、パフォーマンス
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中山 和也 教授 コンテンポラリーアート
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東島 毅 教授 絵画
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福本 双紅 准教授 陶磁器
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松平 莉奈 専任講師 絵画、日本画
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森本 玄 教授 絵画、版画
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ヤノベケンジ 教授 現代美術、彫刻
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山田 伸 教授 日本画
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山元 桂子 専任講師 染色、型友禅
大学院客員教員(2025年度)
- 中井 康之
- 額賀 古太郎
- 下道 基行
- 小金沢 健人
- 沓名 美和
- 姫野 希美
- 高橋 隆史
修了後の進路
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アーティスト※
- 修了生の約6割が、アーティストとして継続的に作品発表や展覧会を行っています。
2024年度実績
- 株式会社ケアサービス
- 株式会社CANDY・A・GO・GO
- 株式会社カインズ
- 株式会社O
- 株式会社モール
- 株式会社ナニワボールト
- 株式会社燕システム
- 有限会社カイカイキキ
- 京都芸術大学 博士課程(進学)