「本物」と対峙し
研究を通して新たな「未来」をデザインする

芸術文化研究領域

Arts and Culture Studies

この領域では、京都を中心に、様々な人々によって育まれてきた有形・無形の芸術文化の「今」を肌で感じ、各自の研究を通してその価値を捉え、芸術文化の持続的活用を考えていきます。単なる論文執筆に留まらず、実践的な授業・研究活動を通してコミュニケーション力や表現力を鍛えます。自身の専門性をもとに、時空を超えた芸術文化と人との関わりを、より多くの人々に魅力的に伝える力を育みます。

分野

日本庭園研究、文化財保存修復、文化財科学、考古学、芸術理論・芸術史、文化研究、舞台演劇研究

カリキュラム

特長

  • 対面学習

    京都で感じ、学び、向き合う「芸術文化の未来」

    京都は社寺や庭園、美術工芸品、祭や舞台芸能など、圧倒的な存在感を放つ芸術文化に彩られた町です。ただ、これらは自然にそこにあるのではなく、多くの人たちの努力や工夫によって今、ここにあります。本領域では、庭園や茶室、博物館・資料館など、授業の中で直に接する「物」や「事」そして「人」の過去と現在のつながりを体感し、そこでの気づきや学びを各自の研究に発展させ、実社会に即した研究スキルを身につけます。

  • 研究センターとの連携による「即戦力人材」の育成

    日本庭園・歴史遺産研究センターをはじめとする様々な研究センターは、研究を実社会に繋げる取り組みを数多く行っています。本領域では、机上で完結する研究のみに落ち着くのではなく、研究センターが開講するプロジェクト科目を活用し、現場での課題解決経験を在学中に積み上げ、「即戦力人材」として社会へ飛び立つ底力をカリキュラムの中で醸成します。

論文執筆について

  • 恵まれた研究環境の中での研究力の定着と実践

    修士論文として大成する各自の研究作業は孤独な戦いではなく、ゼミ担当教員による指導はもとより、学部生との合同ゼミなどの機会に定期的にアウトプットし、多くの仲間や教員からのフィードバックを受け、より現実に即したものへと研ぎ澄まされていきます。学内設備への自由なアクセス、定期的な中間発表会や領域内の研究助成など、修士論文提出に向けた無理のないサポート体制が整えられています。

  • 論文執筆の流れ

    修士号取得のために必要な研究論文の執筆は、指導教員による定期的なゼミ指導のもと、計画的に進めることができます。学内研究設備の利用やゼミでの学外演習などを通して、各自の専門分野に関する知識や技能を磨き、論文執筆と修了展での展示に役立てていきます。

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  • これまでの論文題目
    • 近代日本庭園における煎茶の影響
    • 映画美術の力ー「元禄忠臣蔵」におけるその話法ー
    • 東北・北陸における縄文晩期の漆塗土器の諸相ー漆塗土器の様相と制作技術を中心にー
    • ガラス絵変遷〜幕末から近代へ〜
    • 花粉分析法による植生の復元と農耕の検証ー大阪市平野区瓜破遺跡・京都大学北部構内遺跡を例としてー
      など

奉書の電子顕微鏡写真

近江絵図の調査風景

修了展での展示例

2025年度開講授業

美術工芸品の保存と修復 芸術特論5 【増渕 麻里耶, 大林 賢太郎, 岡田 文男】

正倉院宝物や近現代の美術工芸品の保存と修復について、実際の事例をもとに、その分野を支える理論や理念、現状の課題などについて理解を深める。

禅宗寺院と喫茶文化ー中世から近世への展開 芸術特論6 【木村 栄美, 小川 後楽, 仲 隆裕】

日常茶飯事ということばがあるように、日本において喫茶は欠かせないものとなっており、文化としても多様である。その歴史を振り返ると日本の喫茶文化は、密教、禅宗等を通して中国の影響を受容し展開していった。中でも禅宗は喫茶に大きな影響を及ぼしたばかりでなく、茶礼の儀礼的な要素と嗜好品としての喫茶が融合して茶の湯へと展開し、喫茶独自の茶室に道具等を設え、庭によって俗世とは切り離された空間を作り上げ、総合芸術として現代まで受け継がれている。また、中国文人への憧憬から文人茶として煎茶が確立し、茶の湯と共に日本喫茶文化史の中で欠かすことのできない伝統文化である。本講義では、喫茶文化展開に大きな関わりを持つ中世禅宗寺院とその庭園から、茶の湯、そして煎茶へと広がりを見せ、喫茶が文化として大きく展開するその過程についてを講義、見学を通して概観し、総合的な観点からそれぞれの専門分野との関わりを考究する。

思想と(しての)芸術 芸術特論1 【浅田 彰】

思想(とくに美学)の歴史と芸術(アート&デザイン)の歴史を概括し、比較論(比較文明・比較文化・比較思想・比較芸術)的な視点も導入しながら、現代思想と現代芸術の切り結ぶ場面にまで説き及びます。第一の目的は、個々のジャンルを超えた一般論をすべての学生が前提として身につけることです。

芸術と知覚 芸術特論2 【藤本 由紀夫, ニシジマ・アツシ】

芸術作品と人間の感覚や知覚の関係性について、様々な視点から考察します。 視覚や聴覚の芸術だけでなく、多種多様な表現を取り上げ、それらがどのようにして感覚や感情を刺激し、私たちの認識や思考に作用するのかを考察します。 また、自身が獲得した様々な情報(知識、体験等)を創造的に活用できるようになるためにアナロジー(類推的思考)についても学習します。

近現代日本美術史とジェンダー 芸術特論3 【吉良 智子】

現代アートの世界で制作や批評を続けるためには、ジェンダーやセクシュアリティの知識はもはや必須となっています。まず基礎的知識からスタートし、表現とジェンダーやセクシュアリティにかかわる理論的論文の解説、近現代日本美術をジェンダーやセクシュアリティの視点から分析した論文の講読を行います。

イメージの話法 芸術特論4 【川瀬 慈】

ビル・ニコルスが提唱したドキュメンタリー映像の様式の類型(解説、観察、参加、省察、パフォーマティブ、詩)に関する理論を批判的に検討し、人類学やアートにおける様々な映像記録・表現を分析する。動画、写真、サウンド、制作者の声や身体のパフォーマンス等を用いる“イメージの話法”における各種の技法やその効果について比較検討する。

「個人取材入門」としての調査・
インタビュー・ライティングの方法論
芸術特論7 【木村 俊介】

人に話を聞いてものを書く。展覧会・芸術・工芸・書籍など人のつくったものを受けとめて自前の考えを記す。今やアーティストやキュレーターにも、作品制作や企画づくりのうえで深められたほうがより面白いことを実現できるであろう「言葉での聞き込み、作品・展示の素材づくりをはじめとするライティング」の内実を、実例と方法を見せることで丁寧に伝えていく。そのために、本講座は「個人取材入門 声・記憶・アーカイブ」と題し、[一:情報・道具・固有名詞/二:仕事・民間・クラッシュ/三:声・記憶・アーカイブ/四:傷・楽しみ・静かな世界]という四章立ての構成から、取材の技術を道具として使い込めるような授業を展開してゆく。

キュレーション実践の諸相 芸術特論8 【竹内 万里子, 堤 拓也, 中井 康之】

キュレーション/キュレトリアルといえど、千差万別の実践があることはすでに知られています。アート自体が大きな言葉で定義できないように、もはやキュレーションもスペシフィックな文脈の中で語ることでしかその特異性を抽出できません。本講義では、公的インスティチューションから、芸術祭、アートフェア、中間組織、アソシエーション、個人(アーティスト等)など、さまざまな空間性とその資金性(公金、補助金、助成金、私金など)を操りながら、広くキュレーティング行為を現実社会に実装させているプロフェッショナルを招聘し、それぞれの活動紹介を通じて美学的(エステティック)な経験のみならず運営的(オペレーション)な範囲まで幅広く学びます。

日本の美 再考 芸術特論9 【福本 繁樹】

工芸・民族芸術・伝統・染織など、毎回テーマを設定し、そのテーマをもとに各種視点から「日本の美」について検証。実地体験と、制作や実体験に基づく論理を重視した解説と、パワーポイントで視覚的な資料を豊富に提示した授業形態をとる。

美術館の発展と展覧会史 芸術特論10 【片岡 真実】

美術を取り巻くエコロジーが、美術館、芸術祭、アートフェアなどに拡大し、その制度がグローバルに浸透するなかで、美術史の形成と併走してきた美術館の発展と展覧会の歴史についての基本的な知識を学ぶことで、21世紀に求められるキュレーションの在り方を議論します。

動画もチェック

芸術文化の本質を見つめ実社会の諸問題にコミットする 京都芸術大学 大学院 修士課程 芸術文化研究領域

教員メッセージ

本物に囲まれ挑む本質探究の道

増渕 麻里耶
芸術文化研究領域長 増渕 麻里耶

対面中心の芸術専攻には、千年以上日本の歴史文化の中心だった京都に暮らし学ぶ、魅力的な環境があります。また、芸術文化に関心を持つ仲間と切磋琢磨し、芸術大学のcreativity溢れる教員や学生の熱気に揉まれながら学ぶ、刺激的な環境もあります。そのようなmaterialityやrealityを、まず満喫してください。その上で、本質を探究する「研究」に、ぜひ没頭してください。特徴ある修学環境の中で培われる柔軟な発想をもとに、ときに日本を飛びたし、新たな世界を開拓する人材としての活躍を期待しています。

東京理科大学理学部第1部化学科卒業、同大学院理学研究科化学専攻 (修士課程) 修了。英国 University College London 博士課程 (Institute of Archaeology) にてPh.D. 取得。 筑波大学大学院人間総合科学研究科世界遺産専攻研究員、国立文化財機構東京文化財研究所文化遺産国際協力センターアソシエイトフェロー等を経て現職。専門は文化財科学。古代トルコの金属製品に関する技術史研究のほか、西アジアや東南アジアの文化遺産保護事業に従事する。近年は伝統工芸品等の色材に対して材料学的観点から調査・研究を進めている。

修了後の進路

2024年度実績

  • バンネットワーク株式会社 京都本社
  • 小柳建設株式会社
  • サイトウミュージアム
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